特別支配株主による株式の売渡請求を活用していますか?

【特別支配株主による株式の売渡請求】

相続や事業承継の問題点として、同族会社の株式の分散があります。
少数株主からの株式の買取り方法のひとつに、
特別支配株主による株式の売渡請求があります。

どのような買い取り方法なのでしょうか?
考えてみましょう。

円グラフ

目次
1.特別支配株主による株式の売渡請求のメリットとは?
2.特別支配株主による株式の売渡請求のデメリットとは?
3.特別支配株主による株式の売渡請求は、どうすればいいの?
4.まとめ

1.特別支配株主による株式の売渡請求のメリットとは?

【1】少数株主の承認が必要ない

株式の売渡請求の承認をするのは、会社です。
少数株主の承認は必要ありません。
特別支配株主と少数株主の間で売却価額で合意できない場合などに有効です。

【2】最短21日で少数株主から株式の取得が可能

通知日から20日経過後(21日目)に、
売渡請求した株式の所有権が
少数株主から特別支配株主に移転します。

最短で21日での株式取得が可能です。

2.特別支配株主による株式の売渡請求のデメリットとは?

少数株主から売渡請求の差止めなどを受ける可能性がある

特別支配株主による売渡請求の手続きに不備があったり、
売渡請求を受ける少数株主が不利益を受けるおそれがあるときなど
少数株主から売渡請求の差止めなどを受ける可能性があります。

手続きや売買価額の設定などは、
慎重に行いましょう。

3.特別支配株主による株式の売渡請求は、どうすればいいの?

【1】売渡請求できる株主

会社の議決権の90%以上を保有する株主(特別支配株主)

議決権90%以上を保有する特別支配株主は、
他の少数株主に対して株式の売渡請求をすることができます。

【2】特別支配株主による株式の売渡請求の流れ

次の①から⑦の順に手続きを進めます。

①特別支配株主から会社への通知

特別支配株主は、売渡対価や取得日などを会社へ通知します。

②会社の承認

株式の売渡請求の通知を受けた会社は、
取締役会等で売渡請求の承認をします。

③会社から特別支配株主への承認通知

会社は取締役会等で承認した旨
特別支配株主へ通知します。

④会社から売渡請求を受けた少数株主への通知

会社は、売渡請求を受けた少数株主へ取得日の20日前までに、
特別支配株主による売渡請求を承認した旨を通知します。

⑤会社の事前開示

会社は、売渡請求を受けた少数株主への通知日から
取得日後1年を経過する日まで、売渡請求の条件などを記載した書面を
本店で閲覧可能にしておかなければなりません。

譲渡制限がない会社は、
取得日後6か月を経過する日までになります。

⑥特別支配株主が少数株主から株式を取得

特別支配株主は、取得日に少数株主から
売渡請求した株式を取得します。

⑦会社の事後開示

会社は、取得日後遅滞なく、
特別支配株主が取得した売渡請求株式の数などを記載した書面を
取得日から1年を経過する日まで、本店で閲覧可能にしておかなければなりません。

譲渡制限がない会社は、
取得日後6か月を経過する日までになります。

4.まとめ

中小企業では、社長が会社の議決権(株式)の100%を保有するのが
相続や事業承継の観点からも、いちばん問題が少ないと考えます。
社長が100%保有していないときは、少数株主からの株式買取りを検討します。

少数株主からの株式買取りは、可能な限り話し合いでの合意がいちばんです。
話し合いでの合意が困難なとき、社長が90%以上の議決権を保有しているときは、
株式の売渡請求を検討してみましょう。

設定する売渡金額によっては、
少数株主に株式の譲渡益とともに、税負担が発生する可能性があります。
そのあたりの配慮も必要と考えます。