個人所有の土地の有効活用を検討しています。賃貸マンションは個人で取得した方がいいの?法人で取得した方がいいの?
【賃貸マンションを個人で取得するか、法人で取得するか】
不動産賃貸業を営む個人です。
個人所有の土地の有効活用として、
賃貸マンションの建設を検討しています。
個人Aさんで取得した方が良いのでしょうか?
Aさんの子Bさんが社長になっている、 法人C社が取得した方が良いのでしょうか?
考えてみましょう。
目次
1.賃貸マンションを個人で取得すると、どうなるの?
2.賃貸マンションを法人で取得すると、どうなるの?
3.賃貸マンションを法人で取得するメリットとは?
4.賃貸マンションを法人で取得するデメリットとは?
5.まとめ
1.賃貸マンションを個人で取得すると、どうなるの?
【1】個人Aさんの賃貸収入には、所得税が課税される
個人Aさんは土地を所有しています。
Aさんは、賃貸マンションを建築しました。
マンションの家賃収入は、個人Aさんのものになります。
個人Aさんには、所得税が課税されます。
【2】個人Aさんに相続があった場合、土地と賃貸マンションに、相続税が課税される。
Aさんに相続が発生しました。
土地と賃貸マンションは、Aさんの相続財産になり、
相続税が課税されます。
家賃収入は、Aさんの現金や預金になります。
現金や預金も相続財産となり、
相続税が課税されます。
2.賃貸マンションを法人で取得すると、どうなるの?
【1】法人C社の家賃収入には、法人税が課税される
個人Aさんは、土地を所有しています。
C社の社長は、Aさんの子Bさんです。
C社が、Aさんの土地に、賃貸マンションを建設しました。
マンションの家賃収入は、
C社のものになります。
C社には、法人税が課税されます。
【2】個人Aさんが法人C社から受け取る、賃貸マンションの敷地の地代に、所得税が課税される
Aさんは、C社から、
賃貸マンションの敷地の地代を受け取ります。
地代には、所得税が課税されます。
【3】個人Aさんに相続があった場合、土地に相続税が課税される
Aさんに相続があった場合、土地だけに、
相続税が課税されます。
賃貸マンションを個人Aさんが取得しても、
法人C社が取得しても、
土地に相続税が課税される点は、同じです。
3.賃貸マンションを法人で取得するメリットとは?
【1】所得税の節税メリット 家賃収入を、個人Aさんの所得から法人C社の所得へと分散できる
ここ最近の税制改正の動向は、
個人への所得税や相続税の課税を
強化する傾向にあります。
一方、会社への法人税の課税は、
減税の傾向にあります。
日本の所得税には、
1人の個人に利益が集中すると、
税金が高くなる超過累進税率が採用されています。
法人C社が、賃貸マンションを取得します。
個人Aさんの所得を、法人C社に分散できます。
さらに、法人C社から、個人Aさんが、役員報酬の支給を受けます。
役員報酬からは、給与所得控除額が控除されます。
個人Aさんは、低い税率で所得税が計算されます。
個人Aさんは、所得税の節税メリットを受けられます。
ただ、役員報酬は、役職や業務に見合った金額を
支給する必要があります。
ご注意ください。
【2】贈与税の節税メリット 家賃収入を、個人Aさんの所得から、法人C社を通じて、Aさんの子Bさんの所得へ分散できる
個人Aさんから、Aさんの子Bさんに、
役員報酬に相当する現金を贈与すれば、
贈与税が課税されます。
法人C社が、賃貸マンションを取得します。
個人Aさんの所得を、法人C社に分散できます。
法人C社から、Aさんの子Bが
役員報酬の支給を受けます。
実質的には、AさんからBさんに、C社の給与として現金が分配されます。
贈与税の課税なしに、AさんがBさんに、生前贈与をしたのと同じ効果が得られます。
贈与税の節税メリットがありますね。
役員報酬は、役職や業務に見合った金額に
設定する必要があります。
ご注意ください。
役員報酬からは、給与所得控除額が控除されます。
Bさんは、所得税の節税メリットも受けられます。
【3】相続税の節税メリット 賃貸マンションは法人C社の所有になり、Aさんの相続の際、建物に相続税が課税されない
建物は法人C社の所有になります。
Aさんに相続があっても、相続税が課税されません。
相続税の節税メリットがあります。
Aさんが、法人C社の株主になっています。
Aさんに相続が発生すると、C社の株式に相続税が課税されます。
C社の株式の相続税評価額には、賃貸マンションの評価が加味されます。
実質的に、C社の株式を通じて、
賃貸マンションに相続税が課税されてしまいます。
Aさんが、C社の株主になっているケースでは、
C社株式の贈与や売却を計画的に実行すると良いでしょう。
4.賃貸マンションを法人で取得するデメリットとは?
【1】法人が借地権について、権利金の認定課税を受ける可能性がある
個人が、全く関係のない法人に、
建物所有を目的として土地を賃貸します。
個人は借地権を設定し、法人は個人に権利金を支払うのが通常です。
個人が、同族会社に、
建物所有を目的として土地を賃貸します。
権利金のやりとりは行わないケースが多いでしょう。
同族会社は、権利金相当額を支払わずに得しています。
権利金相当額を収入として、法人税が課税されてしまいます。
権利金の認定課税です。
このケース、そのまま放置しておくのは、
やめておきましょう。
【2】借地権について、権利金の認定課税を受けないためには、どうするの?
2つの方法があります。
①同族会社が、個人に、土地の相続税評価額の過去3年間の平均額のおおむね6%の地代を支払う
同族会社が、個人に、権利金相当額の支払いをしません。
その代わりに、高めの地代(相当の地代)を支払いましょう。
相当の地代の金額は、土地の相続税評価額の過去3年間の平均額のおおむね6%です
土地の相続税評価額の過去3年間の平均額のおおむね6%の相当の地代の支払いすれば、
同族会社への権利金の認定課税は、回避できます。
②同族会社と個人が連名で「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出する
同族会社が、個人に、権利金相当額の支払いをしません。
その代わりに、高めの地代(相当の地代)も支払いません。
このケースでは、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出しましょう。
土地の相続税評価額の過去3年間の平均額のおおむね6%の相当の地代を支払いしなくても、
同族会社への権利金の認定課税は、回避できます。
【3】差額地代が寄付金や役員給与の取り扱いを受ける
「土地の無償返還に関する届出届」を税務署に提出すれば、
同族会社への権利金の認定課税は回避できます。
「土地の相続税評価額の過去3年間の平均額のおおむね6%の地代(相当の地代)」と
「実際に支払う地代」との差額が
寄付金や役員給与の取り扱いを受けることに注意しましょう。
5.まとめ
個人所有の土地の有効活用で、
賃貸マンションを建設する場合、
賃貸マンションは、法人での取得を選択した方が良いでしょう。
個人から法人への家賃収入の分散を通じて、
所得税・贈与税・相続税の節税メリットを受けられます。
同族会社が個人に支払う地代が、
土地の相続税評価額の過去3年間の平均額のおおむね6%(相当の地代)に満たないケースでは、
「土地の無償返還に関する届出書」の提出を忘れないようにしましょう。
忘れてしまうと、権利金の認定課税を受けてしまいます。
相当の地代と実際に支払う地代との差額地代が
寄付金や役員給与の取り扱いを受けることにも
ご注意ください。
個人所有の土地に、個人で賃貸マンションを
取得してしまっている方も多いのではないでしょうか?
そのような方の対策は、後日の記事に記載いたします。