同族会社である不動産管理会社への賃貸マンションの売却価額は、いくらにすればいいの?(低額譲渡には要注意!)

【個人オーナーから同族会社への建物譲渡の譲渡価額、低額譲渡に注意】

賃貸マンションは個人で所有するより、法人で所有した方が、
所得税、贈与税、相続税それぞれの面で節税メリットを受けられ、
有利になるケースが多いです。

すでに、賃貸マンションを個人で所有しているケースです。
賃貸マンションを、法人へ譲渡する必要があります。

では、個人が同族会社へ賃貸マンションを譲渡する場合、
譲渡価額は、いくらにすれば良いのでしょうか?
考えてみましょう。

白くま冷えてます

目次
1.個人Aから同族会社Bへ、時価の1/2未満の譲渡価額で資産を譲渡すると、どうなるの?(著しい低額譲渡)
2.個人Aから同族会社Bへ、時価の1/2以上、時価以下の譲渡価額で資産を譲渡すると、どうなるの?(低額譲渡)
3.個人Aから同族会社Bへ、時価を超える譲渡価額で資産を譲渡すると、どうなるの?(高額譲渡)
4.まとめ

1.個人Aから同族会社Bへ、時価の1/2未満の譲渡価額で資産を譲渡すると、どうなるの?(著しい低額譲渡)

著しい低額譲渡のケースです。
個人Aが、不動産管理会社である同族会社Bへ、賃貸マンションを売却します。
賃貸マンションの時価は、20,000千円です。簿価は、18,000千円です。
譲渡価額を8,000千円とします。

【1】個人A 

時価で資産を譲渡したものとして、譲渡益に譲渡所得税が課税される

個人Aと、個人Aと同族関係のない会社との間で売買します。
通常、譲渡価額は、時価20,000千円になります。
売却益2,000千円に、譲渡所得税が課税されます。

個人Aと同族会社Bとの間で売買します。
譲渡価額を8,000千円とします。

含み益2,000千円に対する課税を、
同族会社Bが賃貸マンションを譲渡するときまで、
意図的な繰り延べが可能です。

これを防止するため、みなし譲渡が適用されます。
時価20,000千円で譲渡したものとみなします。
売却益2,000千円に、譲渡所得税が課税されます。

個人Aから同族会社Bへ、
賃貸マンションを贈与したケースでも、
みなし譲渡が適用されます。

贈与によって、
含み益2,000千円に対する課税を
意図的に繰り延べることができます。

これを防止するため、
贈与であっても、時価による譲渡とみなします。
譲渡所得税が課税されてしまいます。

【2】同族会社B

①時価と譲渡価額との差額(受贈益)に、法人税が課税される

②時価で資産を受け入れたものとする

同族会社Bは、時価20,000千円の賃貸マンションを、
8,000千円だけの支払いで取得します。
受贈益として、得している12,000千円に、法人税が課税されます。

受贈益12,000千円の分だけ、同族会社Bの株式の価額も上昇します。
同族会社Bの株式の価額上昇分だけ、個人Aから、同族会社Bの株主へ、
贈与があったものと考えて、贈与税が課税されます。ご注意ください。 

2.個人Aから同族会社Bへ、時価の1/2以上、時価以下の譲渡価額で資産を譲渡すると、どうなるの?(低額譲渡)

低額譲渡のケースです。
個人Aが、不動産管理会社である同族会社Bへ、賃貸マンションを売却します。
賃貸マンションの時価は、20,000千円です。簿価は、18,000千円です。
譲渡価額を12,000千円とします。

【1】個人A 

譲渡価額から簿価を控除した譲渡益に、譲渡所得税が課税される

今度は、売却価額は12,000千円です。
譲渡価額は、時価20,000千円の1/2以上です。
みなし譲渡の適用は、ありません。

12,000千円-18,000千円
=▲6,000千円(譲渡損失)
譲渡所得税は、課税されません。

同族関係者間での取引です。
税務当局から取引を否認され、
時価で譲渡があったものとみなされる可能性もあることに、
注意しておく必要があります。

【2】法人B

①時価と譲渡価額との差額(受贈益)に、法人税が課税される

②譲渡価額で資産を受け入れる

同族会社Bは、時価20,000千円の賃貸マンションを、
12,000千円だけの支払いで取得します。
受贈益として、得している8,000千円に、法人税が課税されます。

受贈益12,000千円の分だけ、同族会社Bの株式の価額も上昇します。
今度は、時価の1/2以上の価額が売却価額です。
個人Aから、同族会社Bの株主への贈与税の課税は、ないと考えられます。

同族関係者間での取引です。
税務当局から取引を否認され、
贈与税の課税がなされる可能性もあります。
注意しておきましょう。

3.個人Aから同族会社Bへ、時価を超える譲渡価額で資産を譲渡すると、どうなるの?(高額譲渡)

高額譲渡のケースです。
個人Aが、不動産管理会社である同族会社Bへ、賃貸マンションを売却します。
賃貸マンションの時価は、20,000千円です。簿価は、18,000千円です。
譲渡価額を23,000千円とします。

【1】個人A 

譲渡価額から簿価を控除した譲渡益に、譲渡所得税が課税される

①個人Aが同族会社Bの役員である場合
譲渡価額から時価を控除した金額が、役員賞与として課税される
②個人Aが同族会社Bの役員でない場合
譲渡価額から時価を控除した金額が、一時所得として課税される

高額譲渡では、
時価を超える金額3,000千円に
資産の対価性は、ありません。

個人Aが同族会社Bの役員であれば、
3,000千円は、役員賞与として課税されます。
個人Aが同族会社Bの役員でなければ、
3,000千円は、一時所得として課税されます。

【2】法人B 

時価と譲渡価額との差額である受贈益はゼロ、時価で資産を受け入れる

①個人Aが同族会社Bの役員である場合
譲渡価額から時価を控除した金額を、役員賞与として取り扱う
②個人Aが同族会社Bの役員でない場合
譲渡価額から時価を控除した金額を、寄付金として取り扱う

高額譲渡では、
時価を超えて支払う金額3,000千円に
資産の対価性は、ありません。

個人Aが同族会社Bの役員であれば、
3,000千円は、役員賞与として取り扱います。
役員賞与ですので、同族会社Bの経費にできません。

個人Aが同族会社Bの役員でなければ、
3,000千円は、寄付金として取り扱います。
寄付金の限度額の計算をして、限度額を超える金額は、
同族会社の経費にできません。 

4.まとめ

個人Aから同族会社Bへ建物(賃貸マンション)を譲渡する場合、
譲渡価額は、時価に設定するようにしましょう。

時価は、賃貸マンションなどの建物であれば、
不動産鑑定価額や固定資産税評価額などが
考えられます。

実務上、賃貸マンションなどの建物であれば、
時価を、譲渡直前の簿価と考えるケースは多いです。

特殊な要因や事情がなければ、建物の場合、
譲渡直前の簿価を譲渡価額としても
良いのではないかと考えます。

今回は、建物(賃貸マンション)を例に考えてみました。
非上場である同族会社の株式を、
個人から法人へ譲渡するケースも多いでしょう。

非上場株式のケースでも、考え方は同じです。
譲渡価額は、時価に設定するようにしましょう。
株式の場合の時価も、十分な注意が必要です。
後日記載いたします。