法人税の所得拡大促進税制です。雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除を忘れていませんか?
【法人税の所得拡大促進税制、雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除】
当期の従業員への給与支給額が、過去の従業員への給与支給額と比較して
一定レベル以上の増加をしていれば、従業員への給与支給額の増加分のうち一定割合を、
法人税額から税額控除することができます。
では、法人税ではどのような場合に、所得拡大促進税制による
雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除が適用できるのでしょうか?
考えてみましょう。
目次
1.所得拡大促進税制による雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除の7つの条件とは?
2.所得拡大促進税制による雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除の控除金額は、いくらなの?
3.まとめ
1.所得拡大促進税制による雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除の6つの条件とは?
【1】青色申告をしている
所得拡大促進税制による法人税の税額控除を適用するためには、
法人税の申告が青色申告でなければなりません。
白色申告の場合は、所得拡大促進税制による法人税の税額控除を適用できません。
【2】当期が平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始している
所得拡大促進税制による法人税の税額控除は、
平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度に適用できます。
【3】基準年度より雇用者給与等支給額が増加している
当期の雇用者給与等支給額が基準年度より一定割合以上増加していることが、
所得拡大促進税制を適用する条件となります。
①給与支給額は、どのぐらい増加すればいいの?
一定割合は、所得拡大促進税制を適用する事業年度ごとに決められています。
・平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度
→3%以上
・平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度
→4%以上(中小企業者等は、3%以上)
・平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度
→5%以上(中小企業者等は、3%以上)
中小企業者は、資本金1億円以下の法人などです。
②基準年度とは?
基準年度は、下記の事業年度です。
平成25年4月1日以後に開始する事業年度のうち、最も古い事業年度の直前の事業年度
③雇用者給与等支給額とは?
雇用者給与等支給額は、下記の金額です。
法人の国内事業所に勤務する使用人に支給した給与の金額
雇用者給与等支給額には、下記の金額は含まれません。
ご注意ください。
・役員に支給した給与
・法人の役員の親族などの特殊関係者に支給した給与
・使用人兼務役員に支給した給与
・退職金
【4】前事業年度の雇用者給与等支給額より増加している
適用年度の雇用者給与等支給額が、
前期の雇用者給与等支給額より増加していなければ、
所得拡大促進税制による税額控除の適用はできません。
【5】前事業年度よりも、継続雇用者1人当たりの平均給与支給額が増加している
①雇用者1人当たりの平均給与支給額とは?
雇用者1人当たりの平均給与支給額は、
下記により計算します。
継続雇用者の給与等支給額 / 継続雇用者数
当期と前期とでそれぞれ平均給与支給額を計算し、
当期の平均給与支給額が前期の平均給与支給額より増加していれば、適用できます。
②継続雇用者とは?
継続雇用者は、下記になります。
当期と前期の両方で給与の支給を受けている国内事業所に勤務する使用人
下記の人は含まれません。
・前期に退職した使用人
・当期に入社した使用人
【6】雇用促進税制による雇用者数が増加した場合の税額控除の適用を受けていない
所得拡大促進税制による税額控除と、
雇用促進税制による税額控除とは、重複して適用できません。
どちらか一方を選択することになります。ご注意ください。
【7】当期に法人税額が発生している(赤字ではない)
上記5つの所得拡大促進税制による税額控除の条件をすべて満たしていても、
当期が赤字で法人税額がゼロであれば、
残念ながら、所得拡大促進税制による税額控除はできません。
2.所得拡大促進税制による雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除の控除金額は、いくらなの?
下記の2つの金額のうち、いずれか低い金額を法人税額から控除することができます。
【1】(当期の雇用者給与等支給額-基準年度の雇用者給与等支給額)×10%
【2】当期の法人税額×10%(中小企業者等は20%)
3.まとめ
所得拡大促進税制による税額控除は、法人税の値引きです。
条件に当てはまる限り、必ず適用しましょう。
特に、新規に設立した法人は、設立事業年度が赤字でない限り、
従業員に給与を支給すれば、所得拡大促進税制による税額控除の適用を受けることができます。
忘れないようにしましょう。