土地と建物を一括で購入しました。契約書では、購入金額が区分されていません。どんな区分方法を選択しますか?
【一括購入した土地建物の購入金額の区分】
土地と建物を一括で購入しました。
売買契約書で、土地と建物の金額が
区分されています。
区分された金額が適正なら、
その区分された金額を
土地や建物の取得価額にします。
売買契約書には、
土地と建物の金額が
区分されていません。
区分されていないケースでは、
税務上、合理的な区分方法を採用して、
許容される範囲内で、建物の取得価額を多くできれば、
消費税や法人税の節税メリットが得られます。
では、土地と建物を区分するには、
どの区分方法を選択したら良いのでしょうか?
考えてみましょう。
目次
1.土地と建物の購入金額が区分されていないときは、どうするの?(消費税の記載があるケース)
2.土地と建物の購入金額が区分されていないときは、どうするの?(消費税の記載がないケース)
3.まとめ
1.土地と建物の購入金額が区分されていないときは、どうするの?(消費税の記載があるケース)
契約書では、土地と建物の金額が
区分されていません。
消費税の金額の記載があります。
消費税の金額を消費税率で割り算すれば、
建物の金額の計算が可能ですね。
平成28年7月3日に売買した
土地建物の売買契約書には、
次の記載があります。
売買金額100,000千円
売買金額のうち、
消費税の金額 4,000千円
①建物の税抜の取得価額
4,000千円÷8%
=50,000千円
②建物の税込の取得価額
50,000千円+4,000千円
=54,000千円
③土地の取得価額
100,000千円-54,000千円
=46,000千円
売買した年月日によって、
消費税率は異なります。
ご注意ください。
平成元年4月1日から平成9年3月31日まで、3%
平成9年4月1日から平成26年3月31日まで、5%
平成26年4月1日以降、8%
このケースは、実質的には区分されていると考えます。
適正な区分金額である限り、他の区分方法を選択することは、
難しいでしょう。
2.土地と建物の購入金額が区分されていないときは、どうするの?(消費税の記載がないケース)
土地と建物の購入金額が区分されておらず、
契約書に消費税の記載がないときは、
何らかの基準で按分することになります。
【1】土地と建物の固定資産税評価額の割合で按分する方法とは?
按分の基準を、
「固定資産税評価額」
にします。
固定資産税評価額は、
時価の7割
と言われています。
見直しは3年ごとになるものの、
取得価額を按分する基準としては
合理的と考えて良いでしょう。
土地と建物の売買金額
100,000千円「土地A千円、建物(B×1.08千円)」
固定資産税評価額
土地40,000千円、建物5,000千円
次の式が成り立ちますね。
土地A千円+建物(B×1.08)千円=100,000千円
土地A千円:建物B千円=40,000千円:25,000千円
この連立方程式を解きます。
土地A=59,701,492円
建物B=37,313,433円(税抜)
建物B×1.08=40,298,508円(税込)
こんなふうに、土地と建物の取得価額を
区分することができます。
固定資産税評価額は、
比較的簡単に調べることができます。
事務負担は比較的軽いでしょう。
【2】土地と建物の不動産鑑定士の鑑定評価額の割合で按分する方法とは?
按分の基準を、
「不動産鑑定士の鑑定評価額」
にします。
「固定資産税評価額の割合で按分する方法」の「固定資産税評価額」を
「不動産鑑定士の鑑定評価額」に置き換えるだけです。
基準が置き換わるだけで、計算方法そのものは同じです。
鑑定評価の費用がかかるため、
費用対効果を考慮して、
選択する必要があります。
【3】土地の公示地価、建物の標準的な建築価額表から計算した金額の割合により按分する方法とは?
土地は、「公示地価」や「基準地価」を、
建物は、「建物の標準的な建築価額表により計算された金額」を、
按分の基準にします。
「建物の標準的な建築価額表」には、
建築年や構造別に、1㎡当たりの工事価額が
記載されています。
平成10年建築で
鉄筋コンクリートの建物の場合、
工事価額は、203.8千円/㎡です。
床面積が150㎡なら、
203.8千円/㎡×150㎡
=30,570千円
これは、平成10年当時の建築価額と考えられます。
この金額から、購入日までの減価償却費を控除した金額を
合理的な時価と考えます。
「公示地価」と「建物の標準的な建築価額表により
計算された金額」の割合で按分して、
土地と建物の金額を区分します。
「建物の標準的な建築価額表」は、
「建築統計年表(国土交通省)」の
「構造別:建築物の数、床面積の合計、工事費予定額」表の、
1㎡当たりの工事予定額によるものです。
3.まとめ
契約書で土地と建物の金額が区分されていなくても、
契約書に消費税の記載があるケースです。
消費税を消費税率で割り算して、
建物の取得価額を計算します。
合計との差額で、土地の取得価額を計算します。
実質的には、金額が区分されている場合と変わりません。
他の区分計算の方法は、
選択できないと考えて良いでしょう。
契約書で土地と建物の金額が区分されておらず、
消費税の記載もないケースです。
合理的な区分方法である限りは、
建物の取得価額が一番大きくなる方法を
選択すると良いでしょう。
按分する基準を「相続税評価額」とする
区分方法も考えられます。
税務上、許容される範囲内で、建物の取得価額を多くします。
支払う消費税の金額が多くなり、消費税の仕入税額控除の金額が多くなります。
消費税の節税メリットがありますね。
建物の金額が多くなれば、
減価償却費の金額も多くなります。
法人税の節税メリットもあります。
土地と建物を一括で売買する場合、一般的に、
売主サイドは、建物の金額が少なくなれば、受け取る消費税も少なくなります。
消費税の納税額も少なくなり、節税メリットがあります。
買主サイドは、建物の金額が多くなれば、
節税メリットがあります。
売主サイドと買主サイドで、税務上の利害は対立します。
トータルの売買金額の合意は、当然に必要です。
売買契約の締結交渉の過程で、
土地と建物を適正に区分し、区分した金額についても
合意しておくことができれば、ベストです。
売主サイドと買主サイドとの間で、区分した金額の合意ができず、
双方が区分計算した結果、双方の土地と建物の金額が異なることになっても、
合理的な基準で区分している限りは、税務上、問題はないと考えて良いでしょう。