遺産分割は、代償分割と換価分割のどちらがいいの?

【代償分割と換価分割】

相続人たちで、遺産を仲良く分けることができれば、それが一番です。
残念ながら、遺産分割の話し合いが難航するケースもあると思います。
そんなとき、検討すべき分割の方法が2つあります。

相続人のひとりが全遺産を相続し、
その相続人が他の相続人に金銭を支払う代償分割。
全遺産を売り払って換金し、現金を分割する換価分割。

どちらの方法を採用したらよいのでしょうか?
考えてみましょう。

 

冷やし中華はじめました

 

目次
1.代償分割のメリットとは?
2.代償分割のデメリットとは?
3.換価分割のメリットとは?
4.換価分割のデメリットとは?
5.まとめ

1.代償分割のメリットとは?

【1】物理的に分割が困難な資産の分割が可能

ある会社の経営者が亡くなり、後継者Aさんと
後継者でないBさんの兄弟ふたりが相続人です。

事業用の土地 50,000,000円
事業用の建物 50,000,000円
非上場株式 50,000,000円
合計 150,000,000円

土地、建物、非上場株式は、遺産分割しにくい3大資産といえます。
遺産に現金があれば、だいぶ分けにくさは、緩和されるのですが・・・。
今回は、全くありませんね。

後継者でないBさんが取得した方がいいと思われる遺産がありません。
こんなケースでは、通常、後継者Aさんが事業に必要不可欠な
土地、建物、非上場株式を取得します。

その代り、後継者でないBさんには、
Aさんが代償として現金75,000,000円を支払います。
Bさんも、納得することができる分割が可能になります。

【2】代償となる資産は現金でなくてもOK

代償として支払うのは現金でなくても構いません。
もともと相続人が保有していた土地や建物といった不動産でもOKです。

ただ、不動産の譲渡による譲渡所得税が課税されます。
税負担の考慮を忘れないようにしましょう。

2.代償分割のデメリットとは?

【1】代償金には贈与税が課税される?

代償金75,000,000円をAから受け取ったBに対して、
贈与税が課税される可能性があります。
贈与税の税額は、37,250,000円です。
これでは、何のためにお金を動かしたのか分かりませんね。

贈与税の課税リスクは、遺産分割協議書に、
例えばこんな文言を入れることで、回避することができます。

「相続人Aは、第一項に記載する資産を取得する代償として、
相続人Bに対して、金150,000,000円を
平成28年8月18日までに支払うものとする。」

金銭は、代償分割に伴って取得していることを明確にしておきましょう。
この記載がない場合、贈与税の課税リスクが残ります。
くれぐれもご注意ください。

【2】代償金の支払いをしてもらえない可能性がある

代償金の支払義務のある相続人が支払いをしなかった場合、
受け取ることになっていた相続人はたいへん困ってしまいます。

代償金を受け取ることができなかった相続人が、債務不履行を原因として
遺産分割の解除をすることは、判例上は困難なようです。

相続人全員が合意すれば、遺産分割を解除して、
再度、遺産分割をすることは可能です。
ただ、代償金を払わない人が解除に同意する可能性は低いです。

仮に同意したとしても、税務上、リスクが残ります。
再分割で財産を取得した相続人は、亡くなった人から相続で
財産を取得したことにはなりません。

税務上は、当初の遺産分割で財産を取得した相続人から、
再分割で財産を取得した相続人へ贈与があったと考えます。
同額の資産の移転でも、通常、贈与税は相続税より税負担が重いです。

土地や建物の登記と代償金の支払いとを同時に行うなど、
支払いを担保しておく工夫をして、金銭的にも精神的にも
負担が大きい訴訟は、回避するようにしましょう。

3.換価分割のメリットとは?

遺産を換金するので平等な分割が可能

ある会社の経営者が亡くなり、後継でないAさんと
後継者でないBさんの兄弟ふたりが相続人です。

事業用の土地 50,000,000円
事業用の建物 50,000,000円
非上場株式 50,000,000円
合計 150,000,000円


↓ 換金します。

現金 150,000,000円

遺産を売却して、一番分割しやすい現金に換えますので、
納得できる分割ができます。

4.換価分割のデメリットとは?

【1】譲渡所得税の負担が必要となる

土地や建物といった不動産や、非上場株式の譲渡による
譲渡所得税の負担が発生します。
この税負担を誰がするのか、協議する必要があります。

【2】売却が困難な資産の場合、遺産分割が長期化する

建物に実際に住んでいる人がいる場合で、立ち退きに時間がかかるケースや、
事業用の土地や建物、収益力が低い非上場株式が多くあるケースなどでは、
売却交渉がなかなか進まず、遺産分割が長期化します。

いったん、未分割のまま相続税の申告を行うことも考えられます。
ただ、分割の確定を条件に認められる税額を軽減する規定を適用できません。
節税面でのデメリットを受ける可能性もあります。
(一定期間内に分割されれば、適用できるものもあります。)

換価分割は、換金の可能性の高さを考慮したうえで、検討しましょう。

5.まとめ

遺産が土地や建物といった不動産や非上場株式のみで、
現金がほとんどないケースでは、代償分割を検討するのが
よいでしょう。

土地や建物、非上場株式でも、換金が容易であれば、換価分割も
検討してみましょう。

ただ、これはあくまで一般的な話です。
遺産分割における個別の事情に応じて、
分割の方法は全く異なります。

遺産分割では、相続人の自由度が、
比較的高く認められています。

相続人の間で、コミュニケーションを十分とって、
相続人の全員が納得感の高い遺産分割ができれば、
分割の方法にはこだわる必要はないと考えます。