遺言書は、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらがいいの?

【自筆証書遺言と公正証書遺言】

相続人に遺産の分割で負担をかけないようにとか、
お世話になったあの人に自分の財産を譲りたいとか、
遺言を残しておく理由はさまざまだと思います。

遺言を残す場合、自筆証書遺言と公正証書遺言では
どちらを選べばいいのでしょうか?
考えてみましょう。

バーベキューをする家族

 

目次
1.自筆証書遺言のメリットとは?
2.自筆証書遺言のデメリットとは?
3.公正証書遺言のメリットとは?
4.公正証書遺言のデメリットとは?
5.まとめ

1.自筆証書遺言のメリットとは?

内容を自分だけの秘密にできる

遺産を誰に譲るかといったことは、
もめごとの火種にもなりうるデリケートな内容です。
自分だけの秘密にしておきたい人も多いでしょう。

そんなときは、ご自身の自筆で便箋などに遺言を書き終わったら、
封筒に入れて封印をしておきましょう。
これで、秘密を守れると同時に、改ざんの可能性も少なくできます。

もっとも、改ざんなどしたら、その人は相続人の資格を失って、
遺産を相続できなくなります。

2.自筆証書遺言のデメリットとは?

【1】書き方の不備で無効になる可能性がある

自筆証書遺言には、書き方にルールがあります。ルール通りに書きましょう。
文章、日付、氏名を全部自分で書いて、印鑑を押さなければいけません。
書いた文章の訂正にもルールがあります。

ルールから外れたばかりに、訂正が認められず、 ご自身の遺志が反映されない可能性もあります。
判例は、亡くなった方の遺志を尊重して実現させるように考える方向のようです。
とはいえ、文章を訂正したいときは、やはり全部書き直しておく方がよいでしょう。

【2】見つからないリスクや紛失リスクがある

大切にしまいすぎて、ご自身の死後、
遺言書が誰にも見つけてもらえなかったら、
せっかく思いを込めて書いても意味がありません。

ご自身の死後、通常見つかる可能性の高い場所、
銀行の貸金庫とか、ご自宅の金庫に保管しておきましょう。

【3】家庭裁判所に提出する必要がある

公正証書遺言は、公証役場でルールに則った遺言がつくられます。
自筆証書遺言は、ひとりで書きます。
ご自身の死後、家庭裁判所に提出して確認してもらう必要があります。

遺言書を入れた封筒には、例えば、こんな記載をしておきましょう。
「この遺言書は、開封せずに家庭裁判所に提出してください。
平成28年6月19日 板倉雅之」

家庭裁判所に提出して確認を受けなくても、遺言は有効です。
ただ、不動産の相続登記や預金の名義変更ができないデメリットがあります。
まずは、家庭裁判所に提出することが大切です。

家庭裁判所で相続人などの立会いのもと、遺言書を開封します。
これは、遺言が有効か無効かを決めるためでなく、遺言の記載状態や内容を
相続人に知らせて、偽造などを防止するために行います。

万一、封印された遺言をうっかり開封してしまっても、遺言は有効です。
ただ、5万円以下の過料を科される場合があります。
うっかり開封の防止策を考えてみます。

遺言書を封筒に入れ封印します。
その封筒をもう一回り大きい封筒に入れて封印します。
二重の封筒にしておきましょう。

うっかり2回も開封してしまう人は少ないと考えます。

【4】複数みつかる場合がある

いちど遺言書を書いても、心境の変化や財産の増減などで、
遺言書の内容を変更したいケースもあるでしょう。
そんなときは、もう一度、全部書き直しましょう。

その上で、古い遺言書は廃棄します。古い遺言書を廃棄する義務はありません。
ただ、新しい遺言書にうっかり年月日を書き忘れると、
新しい方が無効になって、ご自身の遺志に合致しない
古い遺言書が有効になってしまう可能性もあり得ます。

面倒かもしれませんが、ある意味、遺言は、
人生で最も大切なことのひとつかもしれません。
全部書き直すのがベストと考えます。

3.公正証書遺言のメリットとは?

【1】書き方の不備で無効になることは、まずない

公証人という法律のプロが関与します。
不備は、まずないと考えてよいでしょう。

【2】紛失リスクや改ざんリスクは、まずない

公証役場という役所で保管します。
紛失や改ざんは、まずないと考えます。
なお、公証役場に保管手数料を支払う必要はありません。

【3】家庭裁判所に提出する必要がない

公証役場でルールに則って作るため、
後で家庭裁判所に提出する必要はありません。
すぐに遺言を執行することができます。

4.公正証書遺言のデメリットとは?

【1】証人が2人必要

遺言する人の身内の人や、公証人の身内の人でなければ、基本的に証人になれます。
もし適任者が見当たらない場合でも、弁護士事務所、司法書士事務所や税理士事務所、
あるいは公証役場で紹介してもらうことができます。

【2】公証役場に手数料の支払いが必要

遺産の価額や相続する人数にもよりますが、
念のため10万円程度は、みておくとよいでしょう。

5.まとめ

遺言を残すときは、公正証書遺言にしておくのがよいでしょう。
公証役場で公証人という法律のプロが関与します。
手数料がかかるものの、不備や紛失等は、まずないので、遺言の内容が守られ安心です。

ただ、証人2人にも遺言の内容を知られたくない人は、
自筆証書遺言にしておくのがよいでしょう。
自筆証書を選択するときは、次を忘れないようにします。

①ルール通りに書く
②遺言書を見つけてもらいやすくする
③家庭裁判所に提出してもらえるようにする

なお、遺言の内容が絶対というわけではありません。
遺言の内容と違った遺産分割をしても、
相続人の全員が合意していればOKです。

遺言書の存在が相続人たちの合意形成へマイナスに働くなら、
あえて無視するのも考え方としてあり得ます。
頭の片隅に入れておきましょう。