「教育資金の一括贈与の非課税」、「教育費のその都度贈与の非課税」、どちらを選択したらいいの?

【教育資金の一括贈与の非課税、教育費のその都度贈与の非課税】

祖父母や父母が、子や孫へ教育資金の贈与をします。
一括贈与か、その都度か、いろいろ考えているようです。

では、「教育資金の一括贈与の非課税」を選択した方が良いのでしょうか?
「扶養義務者からの教育費の、その都度贈与の非課税」を
選択した方が良いのでしょうか?
考えてみましょう。

学校の教室

目次
1.教育資金の一括贈与の非課税のメリットとは?
2.教育資金の一括贈与の非課税のデメリットとは?
3.扶養義務者からの教育費の、その都度贈与の非課税のメリットとは?
4.扶養義務者からの教育費の、その都度贈与の非課税のデメリットとは?
5.まとめ

1.教育資金の一括贈与の非課税のメリットとは?

【1】教育資金を一括贈与しても、最大15,000千円までは、贈与税が非課税

祖父母や父母が、30歳未満の子や孫に、教育資金を一括贈与します。
最大15,000千円まで、贈与税は課税されません。

教育資金を銀行預金等として預入して、
銀行等と教育資金管理契約を締結する必要があります。
教育資金の引き出しは、領収証などと引き換えになります。

祖父母が元気なうちに、
子や孫へ教育資金を一括で贈与すれば、
相続税の節税メリットも得られます。

教育資金のすべてが、
贈与税の非課税の対象になるわけではありません。
対象となる教育資金の範囲には、ご注意ください。

【2】受贈者に先に相続が発生しても、贈与税は課税されない

祖父母や父母から、子や孫が教育資金の一括贈与を受けます。
子や孫に先に相続が発生しても、子や孫に贈与税は課税されません。
相続が発生した本人の相続財産として、相続税が課税されます。

受贈者に先に万一のことがあったとしても、
贈与税の負担はありません。

【3】贈与者に相続が発生しても、受贈者の未使用残高に相続税は課税されない

贈与者に相続が発生しました。
受贈者が教育費として使用していない残額は、
贈与者の相続財産に取り込まれません。

例外的に、下記3つを同時に満たすケースなどは、
相続税が課税される場合もあります。
念のため、押さえておきましょう。

①受贈者が30歳になり、教育資金の管理契約が終了

②管理契約の終了時の未使用残金に贈与税が課税された

③管理契約の終了から3年以内に、贈与者に相続が発生

2.教育資金の一括贈与の非課税のデメリットとは?

30歳までに使い切れない場合、未使用の残額に贈与税が課税される

祖父母や父母から教育費を一括で15,000千円まで、
無税で贈与できるメリットは大きいです。

ただ、贈与を受ける子や孫の年齢、贈与する金額に注意しないと、
使い切れないこともあるでしょう。
30歳までに使い切れなかった金額には、贈与税が課税されます。

祖父母や父母の方が、教育資金の一括贈与の目的を
相続税の節税メインで考えてしまうと、
安易に多額の贈与をしがちです。

もちろん、相続税の節税額の計算も大切です。
贈与する祖父母や父母の、
老後の必要資金の計算も大切です。

祖父母や父母の余裕資金から、
子や孫が教育費として必要とする金額を
贈与するようにしましょう。

相続税の節税メリットも
十分に得られると考えます。

3.扶養義務者からの教育費の、その都度贈与の非課税のメリットとは?

【1】必要な都度、教育費の贈与を受けると贈与税が非課税になる

扶養義務者相互間で、必要な都度、教育費を贈与しても
贈与税は課税されません。
扶養義務者からの贈与に該当するのは、主に3つの贈与です。

①直系血族(祖父母、父母、子)相互間の贈与父母から子へ

②祖父母から子や孫へ

③兄弟姉妹相互間の贈与

教育費を必要な都度、贈与すると、
贈与税の負担なく、現金を移転できます。

【2】相続開始前3年以内の、生前贈与加算の適用がない

平成27年中に、祖父が孫へ、
教育費1,000千円、教育費以外の現金1,000千円を
贈与しました。

平成28年中に、祖父に相続が発生しました。
教育費1,000千円は、生前贈与加算の適用がないため
相続税が課税されません。

教育費以外の現金1,000千円は、
生前贈与加算の適用により、
相続税が課税されてしまいます。

扶養義務者相互間での教育費の贈与は、
贈与税も相続税も課税されずに、
現金の移転が可能です。

4.扶養義務者からの教育費の、その都度贈与の非課税のデメリットとは?

【1】教育費を使用せずに預金すると、贈与税が課税される

扶養義務者から教育費の贈与を受けました。
あとで教育費の支払いに充てるため、
いったん銀行に預金しました。

いったん預金した教育費には、贈与税が課税されます。
非課税の適用を受けるには、必要な教育費を、 贈与の都度、
実際に教育費として使用する必要があります。

後々の教育費の出費のために、
まとめて贈与を受けて、銀行預金しておくことはできません。
ご注意ください。

必要な都度、贈与しないとだめですね。
こちらの非課税制度は、一括贈与ができません。
この点が、逆にデメリットになるとも言えます。

教育費以外の費用、
例えば、旅行費用に充てたりした場合は、
もちろん、贈与税が課税されます。

【2】贈与した教育費が常識的な金額の範囲を超えると、贈与税が課税される

贈与した教育費が非課税になる金額は、
上限なく認められるわけではありません。
税務上は、具体的な上限金額が、どこにも規定されていません。

社会通念に照らして、常識的な金額の範囲になります。
実際には、個々の状況で判断してゆきます。
教育費の移転の方法です。

・子や孫に現金を手渡し
・子や孫の銀行口座に振り込む
できれば、避けた方が良いでしょう。

贈与者の銀行口座から、
例えば学校などの支払先へ、直接、
入学金や授業料を支払いましょう。 

贈与者の預金通帳に、金額の記録が残ります。
使途もはっきりします。
金額と資金使途が明確になりますね。

また、教育費の贈与の都度、
贈与契約書を作成も
忘れないようにします。

5.まとめ

教育資金の一括贈与の非課税か、
その都度贈与の非課税かは、
3つを十分検討したうえで判断しましょう。

①贈与者の必要な老後資金や余裕資金
②受贈者の必要な教育資金
③贈与者の相続税の節税メリット

多額の教育資金が必要ない人に、
多額の一括贈与をしても意味はありません。
そんなときは、その都度の贈与でも十分でしょう。

相続税の節税をする必要のない人が、
多額の一括贈与をするのも
お勧めできません。

子や孫が複数いるケースでは、
遺留分にも十分注意しましょう。

財産にアンバランスが生じるなら、
相続でもめない為、どこで埋め合わせるかなどを、
贈与前に親族間で話し合っておくことが必要です。