【譲渡所得の税率】土地建物の譲渡は購入から5年後がいいの?10年後がいいの?
【譲渡所得の税率について、土地建物の譲渡のタイミング】
個人が土地や建物を売却したときの譲渡所得は、
事業所得や給与所得から、分離して課税されます。
所有期間が5年以下か、5年を超えるかによって、
短期の譲渡所得と、長期の譲渡所得とに区分され、
税率も異なります。
では、所有期間が5年以内で譲渡した方が良いのでしょうか?
5年を超えて譲渡した方が良いのでしょうか?
考えてみましょう。
目次
1.土地や建物を所有期間5年以下で譲渡すると、譲渡所得の税率はどうなるの?
2.土地や建物を所有期間5年超で譲渡すると、譲渡所得の税率はどうなるの?
3.マイホーム(居住用の土地建物)を所有期間10年超で譲渡すると、譲渡所得の税率はどうなるの?
4.土地や建物を購入した時の売買契約書を紛失してしまったら、どうなるの?
5.まとめ
1.土地や建物を所有期間5年以下で譲渡すると、譲渡所得の税率はどうなるの?
短期譲渡所得に該当し、税率は下記となります。
【1】所得税=短期譲渡所得×30.63%
【2】住民税=短期譲渡所得×9%
土地を平成23年4月30日に購入して、
平成28年5月31日に売却しました。
土地の売却価額 20,000千円
土地の購入価額 15,000千円
土地売却の諸費用 1,000千円
譲渡所得は、売却価額-(取得費+譲渡費用)で計算します。
20,000千円-(15,000千円+1,000千円)
=4,000千円
この譲渡所得は、
短期になるのでしょうか?
長期になるのでしょうか?
暦の計算では、
所有期間は、5年1か月ですね。
(平成23年4月30日~平成28年5月31日)
所得税の計算では、
所有期間は4年8か月になります。
(平成23年4月30日~平成28年1月1日)
所得税では、「購入日から譲渡した年の1月1日まで」を、
所有期間として計算します。
ご注意ください。
所有期間が5年以下の譲渡所得は、短期譲渡所得になります。
所得税は、1,225.2千円です。
4,000千円×30.63%=1,225.2千円
住民税は、360千円です。
4,000千円×9%=360千円
所得税と住民税の合計は、
1,585.2千円です。
2.土地や建物を所有期間5年超で譲渡すると、譲渡所得の税率はどうなるの?
長期譲渡所得に該当し、税率は下記となります。
【1】所得税=長期譲渡所得×15.315%
【2】住民税=長期譲渡所得×5%
土地を平成23年4月30日に購入して、
平成29年1月31日に売却しました。
土地の売却価額 20,000千円
土地の購入価額 15,000千円
土地売却の諸費用 1,000千円
譲渡所得は、4,000千円です。
20,000千円-(15,000千円+1,000千円)
=4,000千円
この譲渡所得は、
短期になるのでしょうか?
長期になるのでしょうか?
暦の計算では、
所有期間は、5年9か月です。
(平成23年4月30日~平成29年1月31日)
所得税の計算では、
「購入日から譲渡した年の1月1日まで」を、
所有期間にするのでしたね。
所有期間は5年8か月になります。
(平成23年4月30日~平成29年1月1日)
所有期間が5年超の譲渡所得は、長期譲渡所得になります。
所得税は、612.6千円です。
4,000千円×15.315%=612.6千円
住民税は、200千円です。
4,000千円×5%=200千円
所得税と住民税の合計は、
812.6千円です。
所得税と住民税の合計を、
比較してみます。
平成28年5月31日に譲渡したケース 1,585.2千円
平成29年1月31日に譲渡したケース 812.6千円
差額 772.6千円
譲渡のタイミングを8か月遅らせるだけで、
納税額がずいぶん少なくなりますね。
所得税の計算上、
所有期間が5年になるラインの少し手前では、
税負担のデメリットを受ける可能性があることに注意しましょう。
他の事情が許せば、
数か月程度、譲渡のタイミングを遅らせる判断も、
十分あり得ます。
3.マイホーム(居住用の土地建物)を所有期間10年超で譲渡すると、譲渡所得の税率はどうなるの?
長期譲渡所得のうち、60,000千円までの所得税率が軽減されます。
【1】所得税=長期譲渡所得×10.21%
【2】住民税=長期譲渡所得×4%
①所有期間10年超で譲渡したケース
何らかの理由で、マイホームを売却するケースを考えてみます。
平成18年4月30日に購入して、
平成29年1月31日に売却しました。
マイホームの譲渡所得を10,000千円とします。
所得税の計算上、所有期間は10年8か月ですね。
(平成18年4月30日~平成29年1月1日)
所有期間は、10年超です。
譲渡所得60,000千円までは、軽減税率が使えます。
所得税は、1,021千円(10,000千円×10.21%)です。
住民税は、400千円(10,000千円×4%)です。
所得税と住民税の合計は、
1,421千円です。
②所有期間10年以下で譲渡したケース
平成18年4月30日に購入したマイホームを、
平成28年11月30日に売却しました。
所得税の計算上、所有期間は9年8か月です。
(平成18年4月30日~平成28年1月1日)
所有期間は10年以下です。
譲渡所得60,000千円までの、軽減税率が使えません。
所得税は、1,531.5千円(10,000千円×15.315%)です。
住民税は、500千円(10,000千円×5%)です。
所得税と住民税の合計は、
2,031.5千円です。
譲渡のタイミングを2か月遅らせるだけで、
610.5千円(2,031.5千円-1,421千円)も、
税負担が少なくなります。
4.土地や建物を購入した時の売買契約書を紛失してしまったら、どうなるの?
購入金額が不明だと、経費にできる金額は「譲渡価額×5%」のみ。
土地や建物を購入した時の売買契約書を紛失してしまうと、
売却の際、取得費として経費にできる金額が不明で、証明もできません。
土地の売却価額 20,000千円
土地の購入価額 ?千円(契約書紛失で不明)
土地売却の諸費用 1,000千円
このケース、 譲渡価額の5%の金額しか、
経費にできなくなります。
譲渡所得は、18,000千円になってしまいます。
20,000千円-(20,000千円×5%+1,000千円)
=18,000千円
税負担が高額になるデメリットを
まともに受けてしまいます。
土地や建物を購入した時の売買契約書は、
確実に保管しておきましょう。
購入金額の証明さえできれば、打ち合わせのメモでも大丈夫です。
5.まとめ
土地や建物を譲渡するとき、
所得税の計算上の所有期間(購入日から譲渡した年の1月1日まで)が
5年を超えてから譲渡した方がよいでしょう。
適用する税率を下げ、納税の負担を減らすことができます。
所有期間5年以内に土地や建物の譲渡を予定している場合、
可能であれば譲渡のタイミングを遅らせ、所有期間5年超の譲渡にできないか、
検討するようにしましょう。
マイホームであれば、所有期間10年以内に譲渡を予定している場合、
可能であれば譲渡のタイミングを遅らせ、所有期間10年超の譲渡にできないか、
検討するようにしましょう。
納税の負担を確実に減らすことができます。
所得税の計算では、所有期間を
「購入日から譲渡した年の1月1日まで」とします。
くれぐれもお間違えのないようにしてください。