会社の慰安旅行では、金銭支給との選択制を採用した方がいいの?

【会社の慰安旅行で、金銭支給との選択制を採用するか】

会社の利益を慰安旅行で社員へ還元して、
さらなる業績アップとモチベーションアップにつなげたい経営者は、
実は、意外と多いのではないでしょうか。

税務調査の際、旅行の企画内容によっては、
福利厚生費ではなく、給与として認定され、
思わぬ源泉所得税の納付義務を負ってしまうケースがあります。

では、旅行に参加できない人のために、
旅行参加と金銭支給との選択制を採用した方が良いのでしょうか?
しない方が良いのでしょうか?考えてみましょう。

羽田空港の離陸直前の飛行機

目次
1.慰安旅行参加と金銭支給との選択制を採用すると、どうなるの?
2.慰安旅行参加と金銭支給との選択制を採用しないと、どうなるの?
3.給与と認定されないための5つの条件とは?
4.節税対策で社員旅行を前倒し実施するケースは、どうなるの?
5.福利厚生規程を作成しておいた方がいいの?
6.まとめ

1.慰安旅行参加と金銭支給との選択制を採用すると、どうなるの?

旅行代金と金銭支給額が給与認定される

旅行参加と金銭支給との選択制を採用します。
金銭支給を選んだ社員に金銭を支給すると、
金銭だけでなく、旅行代金も給与と認定されます。

個人サイドは、所得になり、課税されます。
会社サイドは、源泉徴収の義務が発生します。
税務的には、デメリットですね。

旅行参加と金銭支給との選択制は、
採用しない方が良いでしょう。

2.慰安旅行参加と金銭支給との選択制を採用しないと、どうなるの?

当社では、旅行参加と金銭支給との選択制を廃止しました。
とてもいい選択だと考えます。ただ、それだけだと、
給与と認定されるリスクが残ります。

では、金銭支給との選択制を採用しない以外に、
どんな条件を満たせばよいのでしょうか?

3.給与と認定されないための5つの条件とは?

【1】旅行の期間が4泊5日以内

国内旅行なら、4泊5日以内にしましょう。
海外旅行なら、外国での滞在日数が、
4泊5日以内にしましょう。

【2】参加人数が全体の50%以上

会社全体の参加率を、50%以上にしましょう。
ただ、事業所ごとに実施するケースでは、
事業所単位で50%以上かどうかの判断も可能です。

【3】不参加者には、旅行代金を支給しない

個人的都合で参加できない従業員の方もいるでしょう。
その従業員に旅行代金を支給すると、
支給額が給与扱いになります。

さらに、旅行に参加した全従業員の旅行代金も、
給与扱いを受けて源泉所得税が課税されます。

業務上の支障があるため、
やむを得ず参加できない従業員に、
旅行代金を支給するケースでは、

その支給額のみが給与扱いになります。
旅行に参加した全従業員の旅行代金は、
給与扱いを受けることはありません。

【4】従業員のために支出する金額が多額でない

従業員一人当たり、
いくらまでなら大丈夫なのでしょうか?

国税庁ホームページには、4泊5日で会社負担額10万円の旅行が、
給与として課税されない例として記載があります。
10万円までは大丈夫と考えられないこともありません。

平成24年12月25日の東京地裁判決では、
旅行代金の会社負担額一人当たり241,300円を
福利厚生費として経費処理したケースで、給与として認定されています。

だからといって、241,300円を超えなければ
いいというわけでもありません。

従業員一人当たり、
いくらまでOKという明確な基準は、
どこにも書いてありません。

国税庁ホームページの10万円というのは、
あくまでも目安としてとらえるべきと考えます。

【5】実質的に私的な旅行や、役員のみの旅行ではない

実質は私的な旅行を、慰安旅行の名のもと、
福利厚生費として費用処理します。

税務的には、給与の取り扱いを受け、
源泉所得税の納税義務が発生します。

役員なら、役員賞与になります。
経費として落とすこともできなくなります。

税務調査で給与として認定されると、
源泉所得税だけでなく、不納付加算税の納税義務も発生します。
ご注意ください。

従業員の家族も旅行に参加して、
家族の旅行代金を会社が負担したケースです。

その家族の旅行代金の会社負担分のみが、
従業員に対する給与として認定されると考えます。

取引先を接待するための旅行代金です。
福利厚生費の取り扱いはできません。
交際費の取り扱いを受けます。

4.節税対策で社員旅行を前倒し実施するケースは、どうなるの?

年1回、慰安旅行を実施している会社が、
節税対策で慰安旅行を前倒しで実施します。
同じ期に2回、旅行代金が経費に計上されます。

税務上、慰安旅行の回数の限度はありません。
2回程度なら問題は少ないと考えます。

ただ、業務上の理由で時期を変更せざるを得なかったなど、
合理的な理由を求められる可能性もあります。
安易な前倒しには、注意が必要です。

5.福利厚生規程を作成しておいた方がいいの?

慰安旅行の会社負担分の給与認定を防止するため、
会社の福利厚生規程に、「慰安旅行は4泊5日以内とする」などの
給与認定されない条件を明記しておくと良いでしょう。

旅行を企画する従業員にも周知でき、
税務にマッチした旅行企画が出来上がるようになるでしょう。

福利厚生規程を作成したら、株主総会を開催して承認を受けます。
株主総会の議事録にも記載しておきます。
税務調査の観点からも、有効です。

6.まとめ

旅行参加と金銭支給との選択制は、
採用しない方が良いでしょう。

金銭支給額が給与認定され、さらに、
旅行参加者の旅行代金も給与認定されます。

選択制を採用しないこと以外にも、
旅行代金を福利厚生費として経費にするため
押さえておきたい条件です。

・慰安旅行の旅行期間は4泊5日以内に
・参加率は50%以上に
・不参加者へ旅行代金の金銭支給はしない

・一人当たりの会社負担分は、極端な高額を回避
・私的な旅行を慰安旅行にしない
・福利厚生規程に慰安旅行の条件を記載

せっかくの旅行です。
給与認定など、税務上の問題に
抵触しない、楽しい旅行を企画しましょう。