消費税の経理処理は、税抜経理と税込経理のどちらがいいの?

【消費税の税抜経理と税込経理】

消費税の経理処理の方法は、税抜経理と税込経理の2つの方法があります。
2つの方法は、どちらでも好きな方を選ぶことができます。

税抜経理を採用しても、税込経理を採用しても、
売上や仕入などの個々の科目の金額に違いは出るものの、
最終的な利益は、原則として変わらないと考えてよいでしょう。

では、いったいどちらを選んだ方がお得なのでしょうか?
税抜経理と税込経理のメリットとデメリットを考えてみましょう。

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目次
1.消費税の税抜経理のメリットとは?
2.消費税の税抜経理のデメリットとは?
3.消費税の税込経理のメリットとは?
4.消費税の税込経理のデメリットとは?
5.税務署へ届出書の提出は必要なの?
6.まとめ

1.消費税の税抜経理のメリットとは?

消費税の税抜経理の方法は、
決算書に記載される売上や仕入、経費の金額を、
すべて消費税抜きの金額で計算する経理方法です。

30万円未満の固定資産を一発で経費にする際に有利

固定資産を購入したときの、一発で経費にするor減価償却するかの判定で、
メリットがあります。取得金額が30万円未満の固定資産を購入した場合、
減価償却せずに一発で経費にできます。

30万円未満かどうかの判定は、
税抜経理を採用していれば、税抜金額で、
税込金額を採用していれば、税込金額で、
判定します。

例えば、ある機械を購入したとします。
税抜280,000円
税込302,400円(280,000円×1.08%)

税抜経理を採用している場合、一発で経費にできます。
税込経理を採用している場合、固定資産として貸借対照表に計上します。
機械の種類にもよりますが、10年などの長期間で減価償却します。

節税面では、税抜経理の採用が有利ですね。
同じように、ひとつの修理や改良のために支出した金額が、
20万円未満であれば、一発で経費にできます。

20万円未満かどうかの判定も、
税抜経理を採用している場合は、税抜金額で、
税込経理を採用している場合は、税込金額で、
判定します。

金額によって税金計算の処理が変わる場合、
金額が少ない方が税務上、有利な処理ができるケースが、
一般的には多いです。

2.消費税の税抜経理のデメリットとは?

事務処理が煩雑

取引ごとに、本体の金額と消費税の金額を分けます。
事務処理が煩雑にはなります。

ただ、会計ソフトが自動計算してくれます。
設定さえ間違えなければ、それほどのデメリットにならないでしょう。
会計ソフトでも、課税、非課税、不課税の判断は自動ではありません。ご注意ください。

3.消費税の税込経理のメリットとは?

消費税の税込経理の方法は、
決算書に記載される売上や仕入、経費の金額を、
すべて消費税抜きの金額で計算する経理方法です。

【1】事務処理が簡単

取引ごとに本体の金額と消費税の金額とを、
分ける必要がありません。
事務処理は、簡単です。

【2】特別償却で有利

中小企業投資促進税制では、160万円以上の機械を購入した場合、
特別償却や特別控除の適用を受けることができます。
その金額の判定は、採用している経理方法によります。

ある機械を購入したとします。
税抜1,500千円
税込1,620千円(1,500千円×1.08%)

税込経理を採用している場合、特別償却や特別控除が適用できます。
税抜経理を採用している場合、適用できません。
ここでは、税込経理が有利ですね。

4.消費税の税込経理のデメリットとは?

利益が高めに出てしまう

税込経理では、決算のときに、消費税の納税額を、
租税公課として経費にします。
それまでは、月次の試算表の利益は、
消費税分だけ高めに出てしまうデメリットがあります。

例えば年間120万円の消費税を納税している会社があるとします。
決算で120万円を経費にすると、利益がいきなり下がってしまい、
納税予測にも影響を与えます。

月次決算では、その段階での消費税の概算納税額を
租税公課として経費にするようにしましょう。
例の場合では、毎月およそ10万円を経費として計上します。
損益のブレを修正できます。

消費税の性質は、あくまで預り金です。本来、損益に含めるものではありません。
損益に含めていると、使うのは自由なんだと思ってしまいがちです。
確かに自由かもしれませんが、消費税は預り金だという性質をきちんと認識する上では、
デメリットになると考えます。

5.税務署へ届出書の提出は必要なの?

税務署への届出書の提出は必要なし

税務署へ税抜経理や税込経理を採用した旨を、届け出する必要はありません。
税込経理を税抜経理に、税抜経理を税込経理に変更したときも、
変更届を提出する必要はありません。

6.まとめ

税抜経理を採用した方がよいでしょう。
固定資産を早期に経費化できる節税メリットを受けられるケースが多いと考えます。
一般的には、30万円ほどの固定資産の購入頻度の方が、
特別償却の対象となる固定資産の購入頻度の方が多いと考えます。

ただ、どちらを採用するにしても、
いったん採用した消費税の経理処理の方法は、
継続することが大切です。

当期の決算書の数値を、過去の決算書の数値と比較することで
その原因を分析し、経営に活用してゆきます。

当期と過去とで異なる経理方法を採用している場合では、単純な比較は危険です。
当期は税込、過去は税抜を採用している場合では、当期の売上は高めに出ます。
税抜では、売上が下がっていたというケースも考えられます。ご注意ください。

業種によっては、許認可のために決算書を提出するケースがあります。
税抜か税込かの指定があれば、指定されている経理方法を採用したほうがよいでしょう。