法人税の欠損金の繰越控除を活用していますか?

【欠損金の繰越控除の活用】

欠損金の繰越控除には、
過去の赤字を当期の黒字にぶつけて、
法人税を節税できるメリットがあります。

青色申告の法人は、欠損金の繰越控除を適用して
法人税の節税メリットを受けられます。
白色申告の法人は、欠損金の繰越控除は適用できません。

青色申告のメリットである、
欠損金の繰越控除について、
考えてみましょう。
金魚すくいをする子供

 

 

目次
1.欠損金の繰越控除とは?
2.欠損金の繰越控除を適用するための3つの条件とは?
3.欠損金の繰越期間は何年?
4.控除できる欠損金に限度はあるの?
5.まとめ

1.欠損金の繰越控除とは?

黒字になれば、法人税額が発生します。
会社に過去の赤字がある場合、当期の黒字にぶつけると、
法人税額を節税できます。

過去の赤字は、当期だけでなく、
翌期以降の黒字とも相殺可能です。
翌期以降も節税できます。

ここでの黒字や赤字は、税務上の黒字と赤字の話です。
当期の損益計算書の黒字金額が変更になるわけではありません。
金融機関や取引先に決算書を提出する場合でも、ご安心ください。

例えば、ある会社で、決算日を平成29年3月31日、資本金を1億円、
当期の利益を4,000千円、前期の損失を▲5,000千円
実効税率を30%とします。

平成29年3月期
相殺前税額 4,000千円×30%=1,200千円
相殺後税額 (4,000千円-4,000千)×30%=0円

平成30年3月期に持ち越す欠損金
▲5,000千円+4,000千円=▲1,000千円
赤字4,000千円によって、1,200千円が節税できます。

平成30年3月期の利益を3,000千円とします。
相殺前税額 3,000千円×30%=900千円
相殺後税額 (3,000千円-1,000千円)×30%=600千円

平成31年3月期に持ち越す欠損金
▲1,000千円+1,000千円=0円
赤字1,000千円によって、300千円が節約できます。

ただ、欠損金の繰越控除には、
そろえるべき条件があります。
繰越期間にも、制限があります。

2.欠損金の繰越控除を適用するための3つの条件とは?

【1】赤字の事業年度に青色申告書を提出

【2】その後は毎期欠かさず申告書を提出

毎年、青色申告書を提出していればOKです。
白色申告なら、今すぐにでも、青色申告の申請書を
提出しておきましょう。

過去に青色申告を取り消されたんだけど・・・
そんな場合でも、取消し通知を受けてから1年たてば、
申請後に青色申告を認めてもらえる可能性は高まります。
必ず提出するようにしてくださいね。

【3】赤字の事業年度の帳簿書類を繰越控除の可能期間が過ぎるまで保存

帳簿は黒字と赤字とに関係なく、
10年間保管しておけば間違いないでしょう。

3.欠損金の繰越期間は何年?

欠損金は、生鮮品と違って傷むモノではないのに、消費期限があります。
シンガポールのように、一定条件のもと、永久無期限に繰越したり、
アメリカのように50年間も繰越したりできません。

日本では、欠損金の繰越期間は次の通りです。

【1】平成13年4月1日前に開始した事業年度・・・5年

【2】平成13年4月1日以後に開始した事業年度
~平成20年4月1日前に終了した事業年度・・・7年

【3】平成20年4月1日以後に終了した事業年度
~平成30年4月1日前に終了した事業年度・・・9年

【4】平成30年4月1日以降に開始する事業年度・・・10年

こう見ると、日本は短いですね。
私見ですが、法人税率を引き下げるだけでなく、
繰越控除の期限をもう少し伸ばしてもらいたいものです。

期限切れ間近の欠損金がある場合、
欠損金を使い切れるだけの利益をあげるのが理想です。
例えば、含み益のある土地の売却や、債務免除を受けるなど、
検討のうえ実行してゆきましょう。

4.控除できる欠損金に限度はあるの?

上記の例では、欠損金の控除額=当期の所得の100%となっています。
所得の100%まで欠損金が控除できる会社は、限定されています。

限定されていると言っても、ご安心ください。
資本金が1億円以下の中小会社に限定です。
多くの会社は大丈夫でしょう。

ただ、中小会社でも資本金5億円以上の大会社に
完全に支配されている100%子会社は、
所得の100%まで欠損金の控除ができません。

【1】平成24年4月1日から平成27年3月31日の間に
開始した事業年度  所得×80%を限度

【2】平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に
開始した事業年度 所得×65%を限度

【3】平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に
開始した事業年度・・・所得×60%を限度

【4】平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に
開始した事業年度・・・所得×55%を限度

【5】平成30年4月1日以降に開始する事業年度・・・所得×50%を限度

資本金1億円の会社が、下記の場合に該当するときは、
欠損金の繰越控除の限度額は、どうなるのでしょうか?

①買収されて資本金5億円の会社に100%支配されることになった場合

②増資で資本金が1億2千万円になった場合

どちらの場合も、欠損金を100%控除できなくなります。
具体的には、次のようになります。

平成29年3月期の利益を4,000千円、
平成28年3月期の損失を▲5,000千円とします。

平成29年3月期
相殺前税額 4,000千円×30%=1,200千円
相殺後税額 (4,000千円-2,400千円)×30%=480千円
4,000千円×60%=2,400千円(欠損金の控除限度)

平成30年3月期に持ち越す欠損金
▲5,000千円+2,400千円=▲2,600千円
赤字2,400千円によって、720千円が節税できます。

平成30年3月期の利益を3,000千円とします。
相殺前税額 3,000千円×30%=900千円
相殺後税額 (3,000千円-1,650千円)×30%=405千円
3,000千円×55%=1,650千円(欠損金の控除限度)

平成31年3月期に持ち越す欠損金
▲2,600千円+1,650千円=▲950千円
赤字1,650千円によって、税額495千円を節税できます。

増資を検討中の会社は、資本金が1億円を超えると、
欠損金の控除金額に制限がかかります。
たとえ欠損金があっても、納税額が発生します。
資金繰りにご注意ください。

特に、期限切れが近い欠損金が多額にある会社では、
増資で資本金1億円を超えてしまうと、
欠損金の控除金額に制限がかかり、
期限切れで切り捨てられてしまう場合があります。

状況が許せば、時期を遅らせるなど、
増資のタイミングに配慮が必要です。

5.まとめ

会社の赤字は欠損金の繰越控除をすることができます。
条件として毎期青色申告書の提出が必要です。

期限切れが近い欠損金がある場合、可能であれば、
含み益のある土地の売却や、債務免除を受けることを考え、
実行しましょう。

また、増資をする場合、資本金1億円のラインを意識しましょう。
1億円を超えると所得の100%まで欠損金が控除できません。
納税額が発生し、資金繰りに影響を与えますので、十分ご注意ください。