課税売上割合に準ずる割合の承認申請書は提出した方がいいの?

【課税売上割合に準ずる割合の承認申請書】

会社がたまたま土地を売却すると、消費税の非課税売上が増えます。
同時に、消費税の課税売上の割合は、減少します。

個別対応方式では、課税売上と非課税売上に共通する課税仕入の消費税は、
仕入税額控除の際、課税売上割合を乗じた分を控除します。

土地の売却で、課税売上割合が極端に減少して、
思わぬ消費税の納税をせまられるケースがあったりします。

そんなとき、課税売上割合に準ずる割合の承認申請書の提出を検討します。
この申請書は提出した方がいいのでしょうか?しない方がいいのでしょうか?
考えてみましょう。北海道の広大な土地と牧草ロール

目次
1.土地の売却でどのぐらい消費税の負担が増えるの?(課税売上割合に準ずる割合の選択の検討)
2.課税売上割合に準ずる割合の承認申請書を提出すると、どうなるの?
3.課税売上割合に準ずる割合の承認を受けるための5つの条件とは?
4.課税売上割合に準ずる割合の承認申請書は、いつまでに提出すればいいの?
5.土地を売却するタイミングは、どうする?
6.まとめ

1.土地の売却でどのぐらい消費税の負担が増えるの?(課税売上割合に準ずる割合の選択の検討)

例えば、課税売上が毎期3億円、課税売上割合が毎期99.99%の会社があるとします。
(預金利息などの非課税売上は10,000円とします。)
3億円/(3億円+1万円)=0.9999
当期は、たまたま土地を1億円で売却しました。

非課税売上が1億円が発生しますね。
当期の課税売上割合は、75%になります。
3億円/(3億円+1億円+1万円)=0.7499≒0.75

個別対応方式を採用している会社の
・課税売上に対応する課税仕入の消費税 15,000千円
・課税売上と非課税売上に共通する課税仕入の消費税 5,000千円
とします。

仕入税額控除の金額は、次のようになります。
・前期 15,000千円+5,000千円×99.99%=19,999千円
・当期 15,000千円+5,000千円×75%=18,750千円

控除額が125万円も減っていますね。
19,999千円-18,750千円=1,249千円

仕入税額控除の金額の減少は、
その金額だけ消費税の納税額が増えることを意味します。

毎期、売上がほぼ同じで、当期は、たまたま土地を売却しただけなのに、
125万円も消費税を多く払ってくれというわけです。
ちょっと納得いかないですよね。

この例で、課税売上の金額が、毎期1億円、2億円の会社なら、
課税売上割合はもっと下がり、土地の売却による消費税の負担はさらに増えます。
どうにかならないのでしょうか?

2.課税売上割合に準ずる割合の承認申請書を提出すると、どうなるの?

課税売上割合に準ずる割合の承認申請書を提出して、
国税当局から承認を受ければ、
土地の売却がないものとした課税売上割合を使用できます。

具体的には、2つのうち、低い方の割合を使用します。

【1】土地を譲渡した課税期間前3年間に含まれる課税期間の通算課税売上割合

3億円×3年/(3億円×3年+1万円×3年)=99.99%

【2】土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合

3億円/3億円+1万円=99.99%

この例だと、どちらも同じなので、99.99%を使います。

仕入税額控除の金額
・前期 15,000千円+5,000千円×99.99%=19,999千円
・当期 15,000千円+5,000千円×99.99%=19,999千円
土地の売却があってもなくても、同じ控除額になりました。

ただ、承認申請書を提出しさえすれば、
自動的に承認されるワケではありません。

3.課税売上割合に準ずる割合の承認を受けるための5つの条件とは?

【1】個別対応方式を選択する

当期が、一括比例配分方式を選択して2年目の場合、
課税売上割合に準ずる割合の使用はNGです。

一括比例配分方式は、少なくとも2年間の継続が義務付けられています。
一括比例配分方式の選択が可能な会社で、新たに選択しようとするケースでは、
少なくとも向こう2年以内に土地の譲渡予定がないか、確認しておいた方がよいでしょう。

【2】土地の譲渡が、たまたまの単発である

毎期毎期、土地の譲渡を連発している場合は難しいでしょう。

【3】土地の譲渡がなければ、事業の実態に変動なし

これはそのままの意味です。

【4】過去3年間で一番高い課税売上割合と一番低い割合との差が5%以内

事業の実態が著しく変わらなければ、結果的に5%以内に
おさまるのではないかと考えます。

【5】翌課税期間に「課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出する

課税売上割合に準ずる割合は、たまたま土地の売却があった場合に、
承認を受けて使用します。

翌期に「課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出しない場合、
翌期は、土地の売却がないのに、課税売上割合に準ずる割合を使用することになります。
こうなると国税当局からせっかく受けた承認を取り消されるケースがあります。

「課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」は必ず提出しましょう。

4.課税売上割合に準ずる割合の承認申請書は、いつまでに提出すればいいの?

課税売上割合に準ずる割合を使用したい課税期間中で、
できれば決算日の3か月前、遅くとも決算日の2か月前には、
提出しておきましょう。

一般的に「届出書」なら、届出の期限を守れば、
税務署への届出で効力を発生するケースが多いです。

今回は、「承認申請書」です。税務署の承認を受けないと、
課税売上割合に準ずる割合を使用できません。

承認を受けた日の属する課税期間から、
課税売上割合に準ずる割合は使用可能になります。

仮に、3月決算で、申請書を3月30日に提出したとします。
税務署が1~2日間で承認するのは、事実上、困難です。
承認が翌期にずれ込み、当期に課税売上割合に準ずる割合が使用できなくなります。

土地の売買契約書のコピーや、土地の元帳のコピーの提出を
求められるケースもあったりします。
税務署の審査期間を考慮するようにしましょう。

5.土地を売却するタイミングは、どうするの?

課税売上割合に準ずる割合の使用による、消費税の節税メリットが大きいなら、
土地の売却を課税期間の終盤に行うのは、可能なら避けた方がよいでしょう。

ただ、消費税の節税メリットがそれほど大きくないケースは、
売却のタイミングをそれほど気にする必要はないでしょう。

なお、土地の売却が、当期の損益に与える影響は、無視できません。
売却のタイミングは、法人税の税額も考慮に入れて、総合的に判断しましょう。
状況に応じ、翌期に売却のタイミングをずらすことも検討しましょう。

6.まとめ

たまたま土地の売却があった場合は、課税売上割合に準ずる割合の承認申請書を
提出したほうが良いと考えます。課税売上割合に準ずる割合の承認を受ければ、
土地の売却による消費税の負担増を抑制できる節税メリットがあります。

ただ、デメリットとして、承認までに一定の時間がかかり、審査の途中で
追加資料の提出を求められたりすると、事務処理の負担が増えます。
また、目立つので、税務調査に入る可能性が高まるかもしれません。

消費税の節税メリットが少なければ、費用対効果を考えて、
承認申請書を提出しない判断もあり得るでしょう。

なお、土地の売買契約書を紙で作成する場合、正しい金額の印紙を貼りましょう。
税務署から売買契約書のコピーの提出を求められた際、提出後、不利益を被る可能性があります。
ご注意ください。