同族会社に貸している土地建物は、遺言で会社に遺贈した方がいいの?
【遺言による同族会社への土地建物の遺贈】
同族会社の社長が、土地や建物を同族会社へ賃貸するケースは多いでしょう。
同族会社へ土地と建物を遺言で遺贈しようと考えています。
では、遺言で、同族会社に土地と建物を遺贈した方が良いのでしょうか?
しない方が良いのでしょうか?
考えてみましょう。
目次
1.遺言で、同族会社に土地や建物を遺贈すると、どうなるの?
2.遺言で、同族会社に土地や建物を遺贈するメリットとは?
3.遺言で、同族会社に土地や建物を遺贈するデメリットとは?
4.まとめ
1.遺言で、同族会社に土地や建物を遺贈すると、どうなるの?
【1】遺言をした個人に、譲渡所得税が課税される
遺言で、個人が土地と建物を遺贈します。
個人への遺言なら、遺言した人に、
譲渡所得税は課税されません。
受取った個人に相続税が課税されるだけです。
法人への遺言には、遺言した個人に、
譲渡所得税が課税されます。
個人と会社が同族関係のない第三者です。
個人が会社へ土地や建物を譲渡すれば、
通常、譲渡所得税が課税されます。
同族関係がある個人が、遺言をしました。
遺贈により、同族会社へ無償で資産が移転します。
含み益には、同族会社が土地や建物を譲渡するまで、課税されません。
こういった不公平を解消するため、みなし譲渡の規定があります。
法人へ遺言をした個人には、土地や建物を譲渡したものとみなして、
譲渡所得税が課税されます。
遺言をした個人が、譲渡所得の確定申告をする必要があります。
遺言をした個人は、お亡くなりになっています。
相続人が代わりに、譲渡所得の確定申告をします(準確定申告)。
準確定申告は、原則として、相続があった日から4か月以内に
行う必要があります。
所得税の納税も、期限は同じです。
譲渡所得の準確定申告をしていませんでした。
①相続があってから1年後2年後に、
譲渡所得の申告がないと税務署から連絡がきた
②相続税の税務調査で譲渡所得の申告がないと指摘された
税務署から、このような指摘を受けてしまうケースもあります。
資産をあげたのに、
あげた人に税金がかかるのは、
なんとなく違和感がありますね。
ただ、税務署からの指摘を受けて、
相続人が、思わぬ高額な所得税の納税を
迫られるケースもあります。
ご注意ください。
土地や建物が含み損であれば、
譲渡所得税はゼロになります。
【2】土地や建物を遺贈された同族会社は、受贈益に法人税が課税される
同族会社が、遺言で、土地と建物を譲り受けました。
土地と建物の代金の支払いは、ゼロです。
同族会社は、得をしている金額の受贈益を計上します。
土地と建物の時価が、受贈益になります。
同族会社は、法人税を負担します。
【3】同族会社の株主が保有する株式の価値増加分に、相続税が課税される
個人が同族会社へ、無償で財産を提供します。
会社は懐を痛めずに、財産を得ます。
会社の株式の価値も増えますね。
財産を提供した個人から、同族会社の株主へ、
株式の価値増加分の贈与があったとされて、
贈与税が課税されるケースがあります。
この場合は、遺言です。
相続税が課税されるケースがあります。
会社が債務超過で、財産の提供後も債務超過であれば、
財産の提供前後ともに、株式の価値はゼロです。
この場合、贈与税や相続税の課税は、ありません。
2.遺言で、同族会社に土地や建物を遺贈するメリットとは?
メリットは、ほとんどない
遺言で、同族会社に土地や建物を遺贈しても、
メリットは、ほとんどないと考えます。
遺言する本人は、亡くなってしまっています。
メリットがあるのは、亡くなったご本人だけなのかもしません。
3.遺言で、同族会社に土地や建物を遺贈するデメリットとは?
【1】遺言をした個人に、譲渡所得税が課税される
【2】土地や建物を遺贈された同族会社は、受贈益に法人税が課税される
【3】同族会社の株主が保有する株式の価値増加分に、相続税が課税される
トリプルで、デメリットがあります。
遺言で、土地や建物を同族会社へ譲る際には、
この3つを思い出してください。
4.まとめ
遺言で、土地や建物を同族会社へ遺贈するのは、
できる限り、しない方が良いでしょう。
家族や会社を思い、良かれと思って遺言したとしても、
譲渡所得税、会社への法人税、株主への相続税が
発生してしまうケースがあります。
土地や建物を同族会社へ譲りたいご意向であれば、
シミュレーションを行って、
生前の売却や現物出資などを検討したが良いと考えます。
遺言で、同族会社へ土地や建物を遺贈したいのであれば、
デメリットを十分に理解してから、
行うようにしましょう。
遺言で、土地と建物を遺贈された会社には、
不動産取得税や登録免許税の負担も発生します。
ご注意ください。