特定口座での上場株式の利益確定売り、買い戻しのタイミングを間違えていませんか?
【特定口座での上場株式の利益確定売り、買い戻しのタイミング】
上場株式の譲渡損失は、譲渡した年の翌年から3年間に限り、
利益と相殺することができます。
3年目に上場株の譲渡益がないと、譲渡損は切捨てになります。
切捨てはもったいないので、3年目の後半から年末にかけて
利益確定売りと買い戻しをする場合があります。
このときタイミングを間違えると、税務上デメリットが発生する場合があります。
では、利益確定売りと買い戻しをするタイミングで注意すべきことについて
考えてみましょう。
目次
1.特定口座でまず利益確定売り、同日に買い戻しを行った場合のデメリットとは?
2.特定口座でまず利益確定売り、翌日に買い戻しを行った場合のメリットとは?
3.まとめ
1.特定口座でまず利益確定売り、同日に買い戻しを行った場合のデメリットとは?
上場しているA社株式100万円を保有しています。
株数は10株、取得時の単価は10万円です。
今年で切捨てになる上場株の譲渡損は▲200万円あります。
9/14にA社株式10株を300万円で売却して、
9/14にA社株式10株を300万円で買い戻しました。
譲渡損益と、買い戻した株の取得価額はどうなるのでしょうか。
【1】譲渡損が切捨てになる可能性あり
特定口座では、同じ日に売りと買いがそれぞれ複数回ある場合、
まずすべて先に買い、その後すべて売ったと考えます。
譲渡損益と取得価額は、移動平均法で計算します。
移動平均法は、取得済みの株式と新しく取得した株式の平均単価を、
株式の取得の都度計算します。
①A社株式の移動平均法の単価 20万円
100万円(過去に取得)+300万円(9/14に取得)
=400万円
400万円/(10株+10株)
=20万円
②A社株式の譲渡益 100万円
300万円(売却金額)-20万円(移動平均単価)×10株(売却株数)
=100万円
譲渡益100万円と譲渡損失▲200万円を相殺できますが、
譲渡損▲100万円が切捨てになってしまいます。
【2】買い戻した上場株の取得価額が小さい
A社株式10株は、300万円で買い戻ししていますが、
取得価額は、移動平均法で計算するため200万円になってしまいます。
将来の売却益が大きくなってしまいますね。
2.特定口座でまず利益確定売り、翌日に買い戻しを行った場合のメリットとは?
A社株式100万円を10株保有しています。
取得時の単価は10万円です。
今年まで相殺可能な上場株の譲渡損は▲150万円です。
ここまでは、先ほどと同じです。
9/14にA社株式10株を300万円で売却して、
9/15にA社株式10株を300万円で買い戻しました。
翌日に買戻しをしてみました。
譲渡損益と、買い戻した株の取得価額はどうなるのでしょうか?
【1】譲渡損が切捨てになる可能性が低い
①A社株式の単価 10万円
過去に購入した単価をそのまま使用します。
②A社株式の譲渡益 200万円
300万円(売却金額)-10万円(そのままの単価)×10株(売却株数)
=200万円
譲渡益200万円と譲渡損失▲200万円を相殺できます。
譲渡損をぴったり使って、譲渡益200万円の税負担はありません。
【2】買い戻した上場株の取得価額が大きい
A社株式10株は、300万円で買い戻ししています。
買い戻し前は、A社株式は保有していません。
取得価額は300万円になり、同日の売買より100万円大きくなります。
将来の売却益は少なくなりますね。
3.まとめ
特定口座では、同日に売買が行われると、
まず買入、次に売却したものとして計算します。
そのうえで譲渡損益と取得価額を移動平均法で計算します。
利益確定売りと買い戻しを同日に行うと、上記の通り、
税務上デメリットが発生することがあります。
特定口座では、利益確定売り後の買戻しは、翌日に行いましょう。