臨時所得に平均課税を適用すること、忘れていませんか?

【臨時所得への平均課税の適用】

個人所有の土地を賃貸しています。
今年、更新を迎え、高額の更新料を受け取りました。
更新料という臨時所得に対して、所得税の負担が重くなりそうです。

このケース、平均課税を選択した方が良いのでしょうか?
平均課税を選択しない方が良いのでしょうか?
考えてみましょう。

竹富島のビーチ

目次
1.平均課税を選択しないと、どうなるの?
2.平均課税を選択すると、どうなるの?
3.平均課税を選択するメリットとは?
4.平均課税を選択するための条件とは?
5.平均課税を選択するデメリットとは?
6.まとめ

1.平均課税を選択しないと、どうなるの?

臨時所得に対する所得税を、超過累進税率で計算する

ある地主さんが、個人所有の土地を賃貸しています。
今年、更新を迎え、借地権の更新料10,000千円を受け取りました。
その他の所得の合計を7,000千円とします。

臨時所得に対して平均課税を選択しないで、
所得税を計算してみましょう。
所得控除は考慮していません。

【1】課税所得

10,000千円(更新料収入)+7,000千円(その他の所得)
=17,000千円

【2】所得税

17,000千円×33%-1,536千円
=4,074千円

通常の所得税の計算になります。

2.平均課税を選択すると、どうなるの?

 臨時所得に対する所得税を、五分五乗方式により計算する

借地権の更新料は、臨時所得に該当します。
今度は、地主さんが臨時所得に対して、平均課税を選択しました。
借地権の更新料収入は10,000千円、
その他の所得は7,000千円です。

【1】課税所得

10,000千円(更新料収入)+7,000千円(その他の所得)
=17,000千円

【2】所得税

①「その他の所得」と「臨時所得の1/5」の合計

7,000千円(その他の所得)+10,000千円(更新料)×1/5
=9,000千円

②「その他の所得」と「臨時所得の1/5」の合計に対する所得税

9,000千円×23%-636千円
=1,434千円

③「その他の所得」と「臨時所得の1/5」の合計に対して課税される所得税の税率

1,434千円/9,000千円 × 100%
=15.93%→15%(小数点以下切捨)

④「臨時所得の4/5」

10,000千円(更新料)×4/5
=8,000千円

⑤「臨時所得の4/5」に対する所得税

③で計算した「その他の所得」と「臨時所得の1/5」の合計に対して課税される所得税の税率を
使って、所得税を計算します。

8,000千円×15%
=1,200千円

⑥「その他の所得」と「臨時所得の1/5」の合計に対する所得税と、
「臨時所得の4/5」に対する所得税の合計

1,434千円+1,200千円
=2,634千円

土地の賃貸借契約で、土地の賃貸料が
高額になるケースは、あまりないでしょう。
更新の際の更新料は、高額になるケースが多いです。

更新は、10年~30年、あるいはそれ以上の単位で行われます。
長期的スパンで見ると、その時だけ所得税が高額になり、
不公平感がありますね。

そこで、臨時所得の1/5だけを、他の所得と一緒に所得税の計算をします。
臨時所得の4/5は、臨時所得の1/5に適用された税率と同じ税率で所得税の計算をします。
超過累進税率でそのまま計算した時よりも、税負担は軽減されます。

3.平均課税を選択するメリットとは?

【1】所得税の負担が軽減され、節税になる

臨時所得に対して、平均課税を選択しないケースと
平均課税を選択したケースとで、
所得税の金額を比較してみましょう。

平均課税を選択しないケースの所得税 4,074千円
平均課税を選択したケースの所得税  2,634千円
差額 1,440千円

平均課税を選択した方が、
所得税の負担か少ないですね。
節税メリットを受けられます。

【2】税務署への届出は不要

平均課税を選択する際に、
税務署へ届出をする必要はありません。

平均課税を選択して計算した確定申告書を
提出すればOKです。

4.平均課税を選択するための条件とは?

平均課税は、無条件に選択できるわけではありません。
臨時所得について、そろえる条件が3つあります。

土地の賃貸借契約で考えてみましょう。
借地権の更新料収入は10,000千円(臨時所得)、
その他の所得は7,000千円です。

【1】臨時所得の契約期間が3年以上

土地の賃貸借契約期間は、
通常、3年以上になると考えられます。
賃貸借契約期間が3年以上であればOKです。

【2】臨時所得が、使用料の2年分以上

土地の賃貸借では、
土地の賃貸料が高額になるケースは、
あまりないと考えられます。

月額100千円とします。
100千円×24月
=2,400千円≦10,000千円(更新料)
このケースは、OKですね。

【3】臨時所得が、総所得金額の20%以上

総所得金額は、
7,000千円(その他の所得)+10,000千円(更新料)
=17,000千円

17,000千円(総所得金額)×20%
=3,400千円≦10,000千円(更新料)
このケースは、OKですね。

土地の賃貸借契約を設定した際に受け取る契約金、
更新の際に受け取る更新料、承諾料などは、臨時所得に該当します。
条件を満たせば、平均課税を適用できます。

借地権設定時の契約金が、
土地の時価の1/2以上であるときは、
契約金は譲渡所得に該当します。
平均課税は選択できません。ご注意ください。

臨時所得に該当するものの例です。
条件を満たせば、平均課税を選択できます。
・特許権、実用新案権などを他人に使用させるために受け取る一時金
・公共事業の施行でやむなく休業や廃業した場合の補償金など

5.平均課税を選択するデメリットとは?

住民税には、平均課税の制度がない

平均課税を選択できるのは、あくまで所得税です。
所得税は超過累進税率を採用しています。
臨時所得が発生すると、高い所得税率が適用されます。
臨時的な重い税負担を軽減する目的で、平均課税が規定されています。

住民税は、10%の一定税率を採用しています。
超過累進税率ではありません。
このため、住民税には、平均課税の制度がありません。

住民税の計算です。
所得控除は、考慮していません。
借地権の更新料収入 10,000千円、
その他の所得の合計 7,000千円とします。

【1】課税所得

10,000千円(更新料)+7,000千円(その他の所得)
=17,000千円

【2】住民税

17,000千円(課税所得)×10%
=1,700千円

10%の一定税率とはいえ、それなりの住民税が課税されます。
ご注意ください。

6.まとめ

借地権の更新料は、臨時所得に該当します。
臨時所得が発生するケースで、条件を満たすときは、
平均課税を選択した方が良いでしょう。
所得税の節税メリットが受けられます。

ライターさんが受け取る著作権料や印税などは、変動所得に該当します。
変動所得は、次のいずれか一つの条件を満たせば、
平均課税を選択できます。

【1】今年の変動所得の金額が、前々年と前年の変動所得の合計の1/2以上
【2】変動所得≧総所得金額×20%

変動所得が発生するケースでも、条件を満たすときは、
平均課税を選択した方が良いでしょう。