貸倒引当金の一括評価による計上を、忘れていませんか?

【貸倒引当金の一括評価による計上】

中小企業では、売掛金などの金銭債権について
貸倒引当金を計上し、経費に落とすことが認められています。
一括評価による貸倒引当金の計上について考えてみましょう。

コスモスの花

目次
1.貸倒引当金の一括評価による計上とは?
2.まとめ

1.貸倒引当金の一括評価による計上とは?

【1】貸倒引当金で経費に落とせる金額は、いくらなの?

次の金額を貸倒引当金として、経費にできます。

(期末の一括評価債権-実質的に債権とみられない債権)×貸倒引当金繰入率

【2】期末の一括評価債権とは?

期末の金銭債権は、個別評価債権と一括評価債権に分けられます。
個別評価債権は、債務者について、
会社更生法や破産法などの法的事実が発生している債権をいいます。

一括評価債権は、債務者について、
法的事実が発生していない通常の債権をいいます。
具体的には、次のような債権です。

①売掛金、受取手形

②未収加工料、未収家賃

③立替金(仮払旅費や仮払交通費は除きます)

④貸付金など

個別評価債権は、一括評価債権とは別に
貸倒引当金の計上をします。

【3】実質的に債権とみられない金額とは?

A社に対して売掛金100万円があり、
同じくA社に買掛金が40万円ある場合、
貸倒引当金の対象になる金額は60万円になります。

表面的な債権金額ではなく、
実質的な債権金額に対して
引当金を設定します。

【4】貸倒引当金の繰入率とは?

次の法定繰入率と貸倒実績率の
どちらか有利な方を選択できます。

①法定繰入率

法人税法に規定されている繰入率で、
業種によって決まっています。

・卸売業、小売業、飲食店業、料理店業 ・・・ 10/1,000
・製造業 ・・・ 8/1,000
・金融業、保険業 ・・・ 3/1,000
・割賦販売小売業 ・・・ 13/1,000
・その他 ・・・ 6/1,000

②実績繰入率

過去3期分の実際に発生した貸倒発生率のことです。

過去3期分の貸倒損失額/(過去3年間の期末の一括評価債権-実質的に債権とみられない債権)

【5】貸倒引当金を計上することができる会社とは?

次のように中小企業に限定されています。

期末の資本金が1億円以下の普通法人

期末の資本金が5億円以上の会社に
株式を100%支配されている法人は除かれます。

2.まとめ

期末の一括評価債権に対し
貸倒引当金を計上して経費に落とすことを
忘れないようにしましょう。

次の2点も考慮しましょう。

・実質的に債権とみられない金額を控除すること
・法定繰入率と実績繰入率の有利な率を選択すること

なお、翌期には、前期の計上額をいったん収入とし、
新たに貸倒引当金を計上することになります。
ご注意ください。