事前確定届出給与は支給した方がいいの?
【事前確定届出給与を支給するか、しないか】
役員の給与は、毎月、同じ金額を受け取る定期同額給与が原則ですが、
実質的な賞与の支給も可能です。
例えば「6月25日と12月25日に、50万円ずつの支給する」と前もって決めて、
税務署に届出書を提出します。
届出書に記載したタイミングで、 届出書に記載した金額を
事前確定届出給与として支給できます。
実質的に、役員に賞与を支給できることになります。
では、事前確定届出給与は支給した方がいいのでしょうか。
支給しない方がいいのでしょうか。
考えてみましょう。
目次
1.事前確定届出給与を支給するメリットとは?
2.事前確定届出給与を支給するデメリットとは?
3.状況の変化により事前確定届出給与を支給できないとき、どうすればいいの?
4.「事前確定給与に関する届出書」は、いつまでに提出するの?
5.事前確定届出給与の対象になる役員は?
6.まとめ
1.事前確定届出給与を支給するメリットとは?
役員の賞与を経費にできる
役員の賞与は、経費にできません。
3つの条件を満たせば、経費にできます。
①あらかじめ支給時期と支給金額を決める。
②税務署に「事前確定給与に関する届出書」を期限までに提出する。
③届出した支給時期に、届出した金額を支給する。
「6月25日と12月25日に、50万円ずつの支給する」と届出すれば、
6月25日と12月25日に、実質的に役員に賞与を支給できます。
2.事前確定届出給与を支給するデメリットとは?
事前確定届出をした金額と違う金額を支給すると、経費にできない
届出をした金額より1円多く支給しても、
1円少なく支給しても、経費にできません。
「6月25日と12月25日に、50万円ずつ支給する」とします。
6月25日に500,001円、
12月25日に499,999円を支給します。
500,001円と499,999円の、どちらも経費にできません。
決めた金額を違う金額の支給を禁止しているわけではありません。
あらかじめ決めたタイミングで、
ぴったりの金額を支給しないと、経費にできなくなります。
何を意味するのでしょうか?
新しい事業年度が始まって3か月以内のタイミングで、
業績を高い精度で予想しておくことが求められます。
業績の堅調な推移が見込まれるのであれば、
強気の金額で決定してもよいかもしれません。
万一、業績の下降が見込まれるのであれば、
抑えた金額を設定しておくか、
届出書を提出しない方がよいでしょう。
3.状況の変化で事前確定届出給与を支給できないとき、どうすればいいの?
資金繰りの都合で事前確定届出給与を支給できないこともあるでしょう。
そんなときは、どうすれば良いのでしょうか?
【1】事前確定届出給与を支給しない
事前確定届出給与を支給しないと、
支給額がゼロなら、税務上、否認される金額が存在しません。
異なる支給額の全額が経費にできなくなるデメリットを回避できます。
決めておいた支給期が到来する前に、やっておきたい2つです。
①株主総会で、事前確定届出給与辞退する決議をする
②株主総会の議事録に、決議の内容を記載しておく
支給がゼロだからといって、支給期がすぎても、
何もしないで放置しておきますと・・・
「会社が払うべき金額を払わなくて良くなった」
↓
「役員個人が、会社に対して債務免除をした」
↓
「会社は得してる」
↓
「会社の収益として、法人税を課税しよう」
なんていう可能性も、絶対ないとは言い切れません。
株主総会を開催し、給与の辞退を決議のうえ、
株主総会の議事録を残しておきましょう。
【2】事前確定届出給与の一部を支給して、残りを未払いにする
この場合を明確に規定している条文は、ありません。
事前確定届出給与の支給額の決定時には、
未払いになることは考えられなかったけれど、
事前確定届出給与の支給のタイミングで資金繰りの都合上、
一部を未払いにせざるを得ないケースは
実は多いのではないでしょうか。
このような資金繰りを理由とするケースでは、
部分的に支給した金額は、経費にならないのでしょうか?
4つを実行しておきましょう。
①株主総会を開催し、資金繰りの都合上、やむを得ず複数回で事前確定届出給与を支給する旨を決議する。
②株主総会の議事録に、決議の内容を記載しておく。
③未払いとなった事前確定届出給与の金額を、会計上未払い経理しておく。
④事前確定届出給与の全額に対して源泉税を計算し、支給の際、支給額に対応する源泉所得税を徴収する。
4つを実行しておけば、税務調査で指摘されても、
資金繰りの都合上、やむを得なかったことを
十分説明できると考えます。
4.「事前確定給与に関する届出書」は、いつまでに提出するの?
中小企業は、原則 「株主総会の決議をした日から1か月を経過する日」までに提出する。
3月決算の中小企業であれば、
株主総会を5月に開催するケースが
多いのではないでしょうか。
株主総会から1か月を経過する日は、6月下旬になります。
「事前確定届出給与に関する届出書」の提出を、
お忘れのないよう、ご注意ください。
「事前確定給与に関する届出書」は、事業年度ごとに提出します。
一度提出したら、次の事業年度以降も、
その届出がずっと有効になるわけではありません。
5.事前確定届出給与の対象になる役員は?
税務上の役員
会社法上の役員はもちろん、
そうでない人も対象になります。
例えば、取締役として登記されていなくても、
会社経営にタッチしている会長や
顧問なども含まれます。
6.まとめ
事前確定届出給与を支給した方がいいか、支給しない方がいいかは、
個別の企業業績の予想を精査したうえで、判断した方がよいでしょう。
一概に、どちらがいいとは、言い切れません。
業績が悪化した場合、臨時改定事由に該当すれば、
「事前確定届出給与に関する変更届出書」を提出して、
決めた支給金額を減額することも可能です。
ただ、認められるケースは非常に限定されており、
通常いわれる業績悪化のレベルでは、厳しいです。
業績悪化で支給額の減額を回避できない場合でも、
株主総会で減額の決議をして議事録を作成しておきましょう。
債務免除の金額を、会社の収益にされてしまう可能性に配慮しておくことが大切です。