出張の旅費日当は支給した方がいいの?
【出張の旅費日当】
出張で必要になる経費といえば、
交通費や宿泊費が一般的です。
それとは別に、会社によっては、
慰労の意味合いを込めた旅費日当を支払う場合もあります。
では、出張の旅費日当は支給した方がいいのでしょうか?
支給しない方がいいのでしょうか?
考えてみましょう。
目次
1.旅費日当を支給するメリットとは?
2.旅費日当を経費するための6つの条件とは?
3.まとめ
1.旅費日当を支給するメリットとは?
【1】旅費日当を支給する側のメリットとは?
旅費日当を支給する会社側のメリットです。
①旅費日当を旅費交通費として経費に落とすことができる
旅費日当は、旅費交通費として経費にできます。
法人税の節税が可能になります。
②源泉所得税や住民税の徴収が不要
旅費日当は給与には該当しません。
源泉所得税や住民税の徴収が不要となります。
【2】旅費日当の支給を受ける側のメリットとは?
旅費日当を受け取る従業員側のメリットです。
①給与として取り扱わないため、所得税や住民税が課税されない
会社側では、旅費日当を旅費交通費として経費に落とすことができます。
旅費日当は、給与として所得税や住民税が課税されることはありません。
②社会保険料の対象にもならない
旅費日当は給与の取り扱いをしません。
社会保険料の対象にもなりません。
【3】重要です!
例えば、月5回の出張をする社長へ、
1回当たり旅費日当10,000円支給します。
10,000円×5回×12か月=600,000円が
旅費交通費として経費になります。
これは会社側のメリットです。
旅費日当は、税務上給与として取り扱いません。
所得税は課税されず、受け取り側は満額の
600,000円を受け取ることができます。
これは受け取り側のメリットです。
なお、旅費日当は社会保険料の計算上も、
対象となる報酬に含まれません。
支払い側も受け取り側も、社会保険料は負担ゼロです。
支払い側と受け取り側の両メリットは、
会社とその経営者個人をあわせたトータルの手元現金の最大化には、
効果を発揮します。
従業員の出張がほとんどなく、
経営者の出張が頻繁で日数も多いような会社では、
特に効果的です。
仮に、旅費日当に相当する月額5万円を役員給与に上乗せして受け取ります。
役員個人の適用税率を30%とし、
給与所得控除は考慮せずに、簡便計算します。
税額 600,000円×30%=180,000円
手取り額 600,000円-180,000円=420,000円
役員個人の適用税率が高ければ高いほど、
給与の手取り額は減少してゆきます。
旅費日当の手取り額は減少しません。
実質的に無税で会社資金を役員個人へ移転することが可能です。
上場企業は出張で旅費日当を支給するところは多いです。
中小企業では、少ないのが現実です。
旅費日当を上手に活用して、会社と個人の手元現金の最大化を目指しましょう。
旅費日当を経費に落とすことには、条件があります。
現実に出張していることが前提になります。
カラ出張はいけません。
2.旅費日当を経費するための6つの条件とは?
旅費日当を支払うだけでは、経費にできません。
6つの条件を満たすことが必要です。
【1】旅費日当を定めた出張旅費規程を作成する
出張旅費規程について株主総会の承認を得て、
その決議内容を議事録に記載します。
会社の最高意思決定機関の承認を受け、
規程の作成過程を透明にしておきましょう。
【2】旅費日当を支給する出張を定める
日帰り出張でも、旅費日当を支給することは可能です。
だからといって、歩いて5分の銀行に行ってきただけで
旅費日当を支給する、これはさすがに難しいでしょう。
そこで、出張の範囲を明確にしておく必要があります。
出張場所までの片道距離や所要時間を基準に定めるのが一般的です。
例えば片道100キロメートル以上の場合とか、
5時間以上の所要時間を要する場合と定めておきましょう。
【3】全員を対象者にする
うちは社長ひとりで、俺しかいないよ、という場合であっても、
従業員が入社したときのことをあらかじめ想定しておきます。
一律でなくても構いませんので、部長、課長などの役職別に、
役職者間でのバランスのとれた日当金額を定めておきましょう。
【4】旅費日当の金額を定める
税務上、旅費日当はこの金額まではOKですよといった
具体的な基準はどこにも書いてありません。
じゃあ青天井かというと、そうでもありません。
ここで登場してくるのは、「通常必要とされる金額」というコトバです。
同業他社や同規模他社と比較して、金額に著しい乖離が
見られないようにしてくださいねというわけです。
個人的見解ですが、旅費日当は、社長に対するもので
一日10,000円程度までと考えます。
【5】交通費と宿泊費を定額支給にするか、実費精算にするか定める
交通費や宿泊費は、出張旅費規程に定めることで、定額の支給にできます。
旅費日当と同じように具体的な基準がありませんので、
「通常必要とされる金額」に設定する必要があります。
個人的見解ですが、宿泊費で、社長個人に対するもので
一日15,000円程度までと考えます。
定額支給すると、実費精算の手続きが不要です。
事務が簡素化されるメリットがあります。
交通費や宿泊費の定額支給の金額が、実費より少なければ、
当然不満がでます。
定額支給の方が必然的に高額になり、
キャッシュフロー悪化というデメリットがあります。
特に従業員も出張が多いケースは、顕著です。
場合によっては、定額支給と実費精算を組み合わせた、
上限金額付き実費精算とすることも検討みると良いでしょう。
【6】出張の承認、仮払いから精算までの手続きを定める
2段階の手続きを定めておきましょう。
①出張そのものが必要かどうか、仮払いの必要があるかどうか承認を受ける
出張旅費精算書に、該当の欄を設けて出張前に提出し、
承認を受けるようにしておきます。
②旅費日当支給のため、精算の承認を受ける
出張旅費精算書、出張先での打ち合わせ内容を記載した出張報告書を
提出して承認をうけるようにしておきます。
出張報告書は打ち合わせメモでも構いません。
交通費、宿泊費を実費精算とする場合は、さらに領収証も一緒に提出します。
これらの書類は、大切に保管しておきましょう。
税務調査の際には、出張の事実があったことの証明に有効です。
3.まとめ
中小企業で社長だけが出張が多い場合、
出張旅費規程を整備して旅費日当を支給した方が良いでしょう。
会社と役員個人をあわせたキャッシュを最大化できます。
税務調査の際に慌てることがないよう、
出張旅費規程の整備をきちんと行いましょう。
消費税の計算上、旅費日当の支給は課税仕入れとして認められています。
消費税の節税にもなります。
給与の支給は、課税仕入れにはなりません。