消費税の計算では、「個別対応方式」がいいの?「一括比例配分方式」がいいの?
【消費税計算は個別対応方式か、一括比例配分方式か】
課税売上の割合が95%以上、かつ
課税売上が5億円以下のケースでは、
売上の消費税から、仕入の消費税の全額を控除できます。
一方、課税売上の割合が95%未満のケース、又は、
課税売上が5億円を超えるケースでは、
売上の消費税から、仕入の消費税の全額を
控除することができなくなります。
売上の消費税から控除する仕入の消費税の金額は、
「個別対応方式」と「一括比例配分方式」の
どちらか1つを選択して計算します。
では、「個別対応方式」を選んだ方が良いのでしょうか。
「一括比例配分方式」を選んだ方が良いのでしょうか。
考えてみましょう。
目次
1.「個別対応方式」を選ぶと、どうなるの?
2.「一括比例配分方式」を選ぶと、どうなるの?
3.「個別対応方式」のメリットとは?
4.「個別対応方式」デメリットとは?
5.「一括比例配分方式」のメリットとは?
6.「一括比例配分方式」のデメリットとは?
7.まとめ
1.「個別対応方式」を選ぶと、どうなるの?
次の会社が「個別対応方式」を選択します。
①課税売上97,200千円(うち、消費税7,200千円)
②非課税売上10,000千円
③課税売上のみに対応する仕入86,400千円(うち、消費税6,400千円)
④非課税売上のみに対応する仕入8,640千円(うち、消費税640千円)
⑤課税売上と非課税売上に共通する仕入 17,280千円(うち、消費税1,280千円)
売上の消費税から控除する仕入の消費税は、
どうなるのでしょうか?
まず、課税売上割合を計算します。
(97,200千円-7,200千円)/(97,200千円-7,200千円)+10,000千円
=90%(課税売上割合)
次に、控除する仕入の消費税を計算します。
6,400千円+1,280千円×90%
=7,552千円(控除する仕入の消費税)
「課税売上のみに対応する仕入の消費税」と、
「(課税売上と非課税売上に共通する仕入の消費税)×課税売上割合」との合計額が
仕入の消費税として控除できます。
「非課税仕入のみに対応する仕入の消費税」は、全額控除できません。
2.「一括比例配分方式」を選ぶと、どうなるの?
先ほどの会社が、「一括比例配分方式」を選択します。
①課税売上97,200千円(うち、消費税7,200千円)
②非課税売上10,000千円
③課税売上のみに対応する仕入86,400千円(うち、消費税6,400千円)
④非課税売上のみに対応する仕入8,640千円(うち、消費税640千円)
⑤課税売上と非課税売上に共通する仕入 17,280千円(うち、消費税1,280千円)
売上の消費税から控除する仕入の消費税は、
どうなるのでしょうか?
まず、課税売上割合を計算します。
(97,200千円-7,200千円)/(97,200千円-7,200千円)+10,000千円
=90%(課税売上割合)
次に、控除する仕入の消費税を計算します。
(6,400千円+640千円+1,280千円)×90%
=7,488千円(控除する仕入の消費税)
「仕入の消費税の合計額×課税売上割合」を
仕入の消費税として控除できます。
シンプルな計算ですね。
3.個別対応方式のメリットとは?
一般的に、「一括比例配分方式」より納税額が少ない
一般的に、会社の売上は、
次のような会社を除いて、
課税売上が多くなるのが普通です。
【非課税売上が多い会社の例】
①不動産賃貸の会社で、居住用物件の賃貸収入が多い
②不動産会社で、土地の売却収入が多い
③医療法人で、社会保険診療収入が多い
課税売上が多く、非課税売上が少ない場合、
非課税売上のみに対応する仕入の消費税は、少なくなります。
課税売上が多いので、仕入の消費税も、
課税売上のみに対応するものが多くなります。
非課税売上に対応する仕入の消費税が少ないので、
全額控除できない仕入の消費税が減ります。
課税売上のみに対応する仕入の消費税が多くなりますので、
全額控除できる仕入の消費税が増えます。
納税額が少なくなりますね。
4.「個別対応方式」デメリットとは?
仕入の消費税を3つに区分する必要があります。
【1】課税売上のみに対応する仕入の消費税
【2】非課税売上のみに対応する仕入の消費税
【3】課税売上と非課税売上に共通する仕入の消費税
仕入の内容に応じて、その都度、判断が必要です。
事務の負担が増加します。
事務負担が増えますが、例えば、営業の電話代や名刺代は、
課税売上のみに対応する仕入に、
経理の電話代や名刺代は、
課税売上と非課税売上に共通する仕入というように、
部門別などの基準をもとに区分して、
課税売上のみに対応する仕入の消費税を多くすると
消費税の節税になります。
5.「一括比例配分方式」のメリットとは?
計算がシンプル
「一括比例配分方式」を選択すると、
仕入の消費税を3つに区分する必要はありません。
判断が必要になるのは、仕入の際、
「消費税が課税されるか、されないか」だけです。
事務は、それほど負担にはなりません。
6.「一括比例配分方式」のデメリットとは?
最低2年間の継続義務がある
「一括比例配分方式」を選択すると、
最低でも2年間は継続して適用した後でないと、
「個別対応方式」を選択できません。
向こう2年間の業績予測に基づいて、
選択するかしないかを判断する必要があります。
ご注意ください。
7.まとめ
一般的に、非課税売上が多い会社を除いて、
「個別対応方式」を選択した方が有利だと考えます。
実際には、業績予測に基づいてシミュレーションを行い、
有利な方を選択するとよいでしょう。
シミュレーションの結果、
「個別対応方式」の選択が有利であっても、
事務の負担を避けたいというケースもあると思います。
2つの方式の納税額の差額がそれほど差がなければ、
事務負担を避けて、「一括比例配分方式」の選択もあり得ます。
納税額の差額と事務負担を考慮して、選択しましょう。
「個別対応方式」を選択したケースでは、
課税売上のみに対応する仕入の消費税が
多くなるように区分ルールを作成することが大切です。
なお、課税売上割合が95%以上、かつ、課税売上が5億以下であれば、
仕入の消費税を全額控除できます。
課税売上の割合が95%より少し低くなりそうなケースでは、
課税売上割合が95%以上にする。
課税売上が5億円を少し超えそうなケースでは、
課税売上を5億以下にする。
このことを意識しておきましょう。
仕入の消費税を全額控除できる節税メリットを
受けることができます。