固定資産の購入したとき、特別償却がいいの?税額控除がいいの?
【特別償却か、税額控除か】
機械やコンピューター、デジタル複合機を購入した場合、
条件を満たすと、税務の特典として、
「特別償却」か「特別控除」のどちらか1つを選択できます。
「特別償却」を選択すると、
購入した初年度に限り「取得価額×30%」の特別償却費を、
普通償却費に、上乗せできます。
「税額控除」を選択すると、
「取得価額×7%」の法人税を
値引きしてもらえます。
では、特別償却を選んだ方がいいのでしょうか。
税額控除を選んだ方がいいのでしょうか。
考えてみましょう。
目次
1.特別償却を選択すると、どうなるの?
2.税額控除を選択すると、どうなるの?
3、どちらも選択しないと、どうなるの?
4.特別償却のメリットとは?
5.特別償却のデメリットとは?
6.税額控除のメリットとは?
7.税額控除のデメリットとは?
8.まとめ
1.特別償却を選択すると、どうなるの?
購入した初年度限定で、 「取得価額×30%」の特別償却費を、 普通償却費に上乗せできる。
機械6,000千円を購入しました。
耐用年数は3年、会社の利益は、毎期5,000千円です。
実効税率を30%とします。
【1】購入初年度
利益 5,000千円
普通償却 ▲2,000千円(6,000千円÷3年)
特別償却 ▲1,800千円(6,000千円×30%)
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最終利益 1,200千円
法人税等 360千円(1,200千円×30%)
【2】2年目
利益 5,000千円
普通償却 ▲2,000千円(6,000千円÷3年)
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最終利益 3,000千円
法人税等 900千円(3,000千円×30%)
【3】3年目
利益 5,000千円
普通償却 ▲200千円(6,000千円-1,800千円-2,000千円×2年)
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最終利益 4,800千円
法人税等 1,440千円(4,800千円×30%)
3年間の法人税等の合計は、
2,700千円(360千円+900千円+1,440千円)です。
2.税額控除を選択すると、どうなるの?
購入した初年度限定で、 「取得価額×7%」の税額控除ができる。
「法人税×20%」が控除の限度。
【1】購入初年度
利益 5,000千円
普通償却 ▲2,000千円(6,000千円÷3年)
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最終利益 3,000千円
法人税等 900千円(3,000千円×30%)
税額控除 ▲420千円(6,000千円× 7%)
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最終税額 480千円
【2】2年目
利益 5,000千円
普通償却 ▲2,000千円(6,000千円÷3年)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最終利益 3,000千円
法人税等 900千円(3,000千円×30%)
【3】3年目
利益 5,000千円
普通償却 ▲2,000千円(6,000千円÷3年)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最終利益 3,000千円
法人税等 900千円(3,000千円×30%)
3年間の法人税等の合計は、
2,280千円(480千円+900千円+900千円)です。
3.どちらも選択しないと、どうなるの?
普通償却限度額のみを計算する
・1~3年目
利益 5,000千円
普通償却 ▲2,000千円(6,000千円÷3年)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最終利益 3,000千円
法人税等 900千円(3,000千円×30%)
3年間の法人税等の合計は、
2,700千円(900千円+900千円+900千円)です。
「どちらも選択しない」という選択肢は、ありえませんが、
参考として書いておきます。
4.特別償却のメリットとは?
購入初年度に、多額の償却費を経費できる
3パターンの「初年度の法人税等」を比較してみましょう。
【初年度の法人税等】
・特別償却を選択 360千円
・税額控除を選択 480千円
・どれも選択せず 900千円
特別償却を選択した場合が、いちばん少なくなっていますね。
「資金繰りの都合で、短期的に、
購入初年度の法人税等をどうしても少なくしたい」
そんなときは、有効です。
5.特別償却のデメリットとは?
トータルの法人税額が、「税額控除」より多い
3パターンの「3年間の法人税等の合計」を
比較してみましょう。
【3年間の法人税等の合計】
・特別償却を選択 2,700千円
・税額控除を選択 2,280千円
・どれも選択せず 2,700千円
特別償却を選択した場合と、どれも選択しなかった場合とでは、
「3年間の法人税等の合計」は、かわっていませんね。
特別償却は、
「特別に30%だけ前倒しで経費にしていいですよ」
という内容です。
3パターンのどれも、
3年間の減価償却費の合計は、
6,000千円です。
機械6,000千円を購入しても、
6,000千円×130%=7,800千円の特別償却を
認めているわけではありません。
シンガポールなどと違って、取得価額以上の償却はできません。
特別償却の選択は、
長期的にみると、デメリットになります。
「数千万円の利益が出た、かつ、その事業年度に購入した機械も数千万円だ」
といったとき、特別償却を選択した方が有利になる場合もあります。
ただ、ケースとしては少ないので、頭の片隅に置いておく程度でよいでしょう。
6.税額控除のメリットとは?
トータルの法人税額が、「特別償却」より少ない
再度、3パターンの「3年間の法人税等の合計」を
比較してみましょう。
【3年間の法人税等の合計】
・特別償却を選択 2,700千円
・税額控除を選択 2,280千円
・どれも選択せず 2,700千円
税額控除を選択した場合は、
「3年間の法人税等の合計」が、一番少なくなっていますね。
税額控除を選択しても、通常の減価償却をすることができます。
一言でいえば、法人税等の値引きです。
長期的には、納税額がいちばん少なくなります。
初年度にどうしても法人税等を減らしたい事情がない限りは、
税額控除を選択した方が良いでしょう。
7.税額控除のデメリットとは?
法人税等が発生しないと「税額控除」ができない
法人税等がゼロであれば、税額控除ができません。
税額控除を適用できる設備への投資が確定していれば、
その事業年度の役員報酬の金額を減額を検討して、
税額控除の恩恵を受けられるようにしましょう。
8.まとめ
「税額控除」を選択した方が良いでしょう。
長期的な法人税等の納税額は、「特別償却」を選択するよりも
確実に少なくなると考えて良いでしょう。
「購入した初年度の法人税等を、資金繰りの都合で、どうしても節約したい」
「数千万円の利益が出て、その事業年度に数千万円の機械を購入している」
といったケースのみ、「特別償却」の選択を検討してみましょう。
特別償却や特別控除の対象となる資産には、条件があります。
160万円以上の機械、120万円以上のコンピューターやデジタル複合機で、
事務の効率化に資するものなど限定されています。ご注意ください。
対象となる会社にも、条件があります。
特別償却では、資本金が1億円以下、
税額控除では、資本金が30,000千円以下など、限定されています。
増資を行う際には、注意が必要です。