相続税の生前贈与加算と贈与税額控除を忘れていませんか?

【相続税の生前贈与加算と贈与税額控除】

所有している財産を生前贈与すると、生前贈与財産の所有権は、
財産の贈与を受けた人に移転します。
贈与者が亡くなっても、原則として、生前贈与財産に相続税は課税されません。

一定の条件に当てはまると、生前贈与財産が相続財産に取り込まれて、
相続税が課税されてしまう場合があります。
いわゆる生前贈与加算です。

では、どのようなときに生前贈与財産が相続財産に取り込まれ、
相続税が課税されてしまうのでしょうか?
考えてみましょう。

サーファーと富士山

目次
1.相続税の生前贈与加算が行われる3つの条件とは?
2.相続税の生前贈与加算の対象にならない財産とは?

3.相続税計算では、贈与税額控除を忘れずに!
4.まとめ

1.相続税の生前贈与加算が行われる3つの条件とは?

【1】生前贈与財産が暦年課税の贈与財産である

相続税の生前贈与加算は、暦年課税の贈与財産が対象になります。
相続時精算課税の贈与財産は、生前贈与加算の対象になりません。

【2】生前贈与が相続開始前3年以内に行われている

相続開始前3年以内に生前贈与が行われていると、
相続税の生前贈与加算の対象になります。

相続開始日を平成28年8月20日とします。
平成25年8月20日から平成28年8月20日までの間に生前贈与が行われた場合、
生前贈与財産は、相続財産に取り込まれ、相続税が課税されます。

生前贈与加算の規定がなければ、亡くなる直前に全財産を贈与すると、一切相続税が課税されません。
国として、それはまずいということで、生前贈与した日からお亡くなりになる日までの期間が比較的短い3年間に限って
生前贈与した財産は相続財産に含まれると考えます。

なお、生前贈与した財産に贈与税が課税されたかどうかは問いません。
次のような贈与財産も、相続税の生前贈与加算の対象となります。

① 暦年課税の基礎控除110万円以下の生前贈与財産
②贈与者が死亡した年の生前贈与財産

実質的に生前贈与による相続税の節税メリットは失われます。
ご高齢になってから、3年程度の生前贈与計画では、相続税対策の意味はありません。
暦年課税による生前贈与は、長期的かつ計画的に行うことが重要です。

【3】受贈者が相続又は遺贈により財産を取得している

生前贈与により財産の贈与を受けた人が、
贈与者の死亡により、相続又は遺贈で財産を取得していると
相続税の生前贈与加算の対象となります。

逆に言えば、生前贈与により財産の贈与を受けた人が、
相続又は遺贈により財産を取得していなければ、
相続税の生前贈与加算の対象になりません。

お孫さんなど、法定相続人でない人に生前贈与をします。
法定相続人でない人は、通常、相続又は遺贈で財産を取得しません。
法定相続人でない人に生前贈与すると、相続税の節税メリットがあります。

2.相続税の生前贈与加算の対象にならない4つの生前贈与財産とは?

下記の4つの生前贈与財産は、相続税の生前贈与加算の条件に該当しても、
生前贈与加算の対象になりません。

【1】贈与税の配偶者控除の適用を受けた生前贈与財産

贈与税の配偶者控除の適用を受けた生前贈与財産は、
相続税の生前贈与加算の対象になりません。

【2】住宅取得等資金の贈与税の非課税の適用を受けた生前贈与財産

住宅取得等資金の贈与税の非課税の適用を受けた生前贈与財産は、
相続税の生前贈与加算の対象になりません。

【3】教育資金の一括贈与の非課税の適用を受けた生前贈与財産

教育資金の一括贈与の非課税の適用を受けた生前贈与財産は、
相続税の生前贈与加算の対象になりません。

【4】結婚・子育て資金の一括贈与の非課税の適用を受けた生前贈与財産

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税の適用を受けた生前贈与財産は、
相続税の生前贈与加算の対象になりません。

3.相続税計算では、贈与税額控除を忘れずに!

相続税額から、生前贈与加算の対象となる財産に課税された贈与税額を控除する

生前贈与加算の対象になる贈与財産は、相続財産に取り込まれて、相続税が課税されます。
生前贈与加算の対象になる贈与財産に贈与税が課税されている場合、さらに相続税を課税すると
同一財産に相続税と贈与税が重複して課税されてしまいます。

この二重課税を排除するために、贈与税額控除を行います。
相続税額から、課税された贈与税額を控除します。
贈与税の申告書は大切に保管しておき、贈与税額控除を忘れないようにしましょう。

加算税や延滞税、利子税は贈与税額控除の対象となりません。
ご注意ください。

4.まとめ

相続開始前3年以内の生前贈与財産を、相続財産に含めることを忘れないようにしましょう。
税務調査で指摘を受ける可能性は相当程度高いでしょう。
不利益を受けないようご注意ください。

生前贈与加算の対象財産に贈与税が課税されている場合、
相続税額から課税された贈与税額を控除することを忘れないようにしましょう。
贈与税額控除を忘れても、基本的に税務署は教えてくれません。

生前贈与加算の見地から、相続税の節税対策として、2つが考えられます。

①暦年課税による生前贈与は、3年以内加算の適用を受けないよう長期的かつ計画的に行う
②通常、相続又は遺贈で財産を取得しない法定相続人でない人に生前贈与を行う
③贈与税の配偶者控除や、住宅取得等資金の贈与税の非課税など、生前贈与加算の適用を受けない生前贈与を有効活用する