相続と事業承継に備えて、株式の準共有の対策を忘れていませんか?

【相続と事業承継における株式の準共有】

株主に相続が発生すると、遺産分割が完了するまでは、
株式は、株主の相続人が法定相続分に応じて準共有することになります。
株式の準共有が発生すると、やっかいなことが起こる可能性があります。

では、準共有を避けるためには、どのような対策が有効なのでしょうか?
考えてみましょう。

ニューヨーク証券取引所

目次
1.相続と事業承継における株式の準共有と、そのデメリットとは?
2.相続と事業承継における株式の準共有を避けるためにするべき3つのこととは?
3.まとめ

1.相続と事業承継における株式の準共有と、そのデメリットとは?

【1】株式の準共有って、なに?

株式1株1株のそれぞれを複数人が共有した状態

社長Aが経営する会社の発行済み株式総数を1,000株とし、
社長Aが全株を保有しています。 社長Aに相続が発生したとします。
社長Aの相続人は、妻B、子C、子Dです。

遺産分割が完了するまでの株式の所有関係はどうなるのでしょうか?
相続人が相続分に応じて株式1株1株をそれぞれ準共有することになります。
相続分は、妻Bが1/2、子Cが1/4、子Dが1/4です。

株式を妻Bが500株、子Cが250株、子Dが250株を
取得することにはなりません。株式1株1株それぞれについて、
妻Bが1/2、子Cが1/4、子Dが1/4を準共有することになります。

妻B、子C、子Dが株式1,000株すべてについて1株1株を準共有すると、
どのようなデメリットが想定されるのでしょうか?

【2】株式の準共有の3つのデメリットとは?

①会社へ権利行使するには、準共有者全員で代表者1人を決定しなければならない

②決定した代表者を会社に通知しなければならない

③議決権行使は代表者1人だけ

今回の例では、妻B、子C、子Dの3人が株式1株1株を準共有します。
会社へ権利を行使するには、株式1株1株について代表者を決めなければなりません。
代表者の決定方法は、相続分の過半数によることになります。

代表者1人を決定したら、会社に通知します。
議決権の行使は、代表者1人が行使します。

3人とも意見が異なったり、もめたりすると代表者1人を決めることができません。
代表者1人が決まらないと、会社に権利を行使することができなくなります。
経営における意思決定がストップし、会社が危うい状況に陥りかねません。

相続人間で利害が対立して争いになるケースもあります。
代表者1人を決定する協議の有効性、会社への通知方法の有効性、議決権行使の有効性などが
裁判で争われることがあります。

協議をせずに一部の相続人だけで代表者1人を会社に通知することなどは避けましょう。

2.相続と事業承継における株式の準共有を避けるためにするべき3つのこととは?

【1】後継者へ株式を計画的に生前贈与する

相続や事業承継に備えて、会社の株式を後継者に生前贈与することが
準共有を防止するうえで有効です。
後継者を誰にするか、いつバトンタッチするかを決めましょう。

株式の贈与税の納税猶予、相続時精算課税贈与、暦年課税贈与のどれを採用するか、
相続発生による遺産分割も含めてシミュレーションをします。
生前贈与の方法を決定したら、計画的に実行しましょう。

【2】株式を代償分割のするための資金準備

生前贈与だけで十分に対策ができない場合、遺産分割の際に会社経営に異議を唱える相続人などから
株式を代償分割で取得できるよう、代償金の資金準備をしておきましょう。
資金準備の方法として、前もって生命保険に加入しておくことなどがあります。

【3】議決権のない種類株式の導入

議決権のない種類株式や取得条項付の種類株式を活用して、
経営に関与しない人に議決権をもってもらわないようにしたり、
取得条項を付けて会社が株式を取得できるようにしておきましょう。

3.まとめ

会社の株式の準共有を避けるためには、
後継者へ株式を計画的に生前贈与することが
効果的です。

相続発生による遺産分割も含めてシミュレーションを行い、
株式の贈与税の納税猶予、相続時精算課税贈与、暦年課税贈与などの
生前贈与方法を決定します。

対策が不十分なら、相続発生時に代償分割で対応できるよう、
代償金の資金準備をしておきましょう。