増加償却の届出書は提出した方がいいの?

【増加償却の届出書】

受注アップで残業しないと生産が追い付かないケースや、
受注単価の切下げで数をこなさないと利益を確保できないケースでは、
機械装置をフル稼働させて対応することも多いと思います。

通常の稼働時間よりも多く稼働した場合、
増加償却の届出書を提出できるケースがあります。
増加償却の届出書は提出した方がいいのでしょうか?
しない方がいいのでしょうか?考えてみましょう。

鍋できたよー。

目次
1.増加償却で減価償却費を増やそう
2.増加償却の計算 5つのステップ
3.増加償却をするための5つの条件とは?
4.「増加償却の届出書」はいつまでに提出すればいいの?
5.まとめ

1.増加償却で減価償却費を増やそう

税務上、機械の耐用年数は、種類によっても違いますが、
特需などが発生していない普通の経済状況下で、
平均的な使用時間をもとに決められています。

平均的な使用時間を超えて使用すれば、
機械装置もそれだけ損傷します。
その分だけ減価償却費を増やしましょうというわけです。

消費税率アップ前の住宅建設の駆け込み需要のケースや、
猛暑で、冷たい食べ物やエアコンが特需のケースを考えます。

関連する材料や部品、食品の製造会社は、
機械装置の稼働を通常8時間のところ、
16時間の稼働をさせたりして、製品の増産に対応します。

稼働時間の増加による機械の損耗を考慮し、
減価償却費を増やすことができます。

ただ、稼働時間が8時間から16時間になったからと言って、
減価償却費を単純に2倍にすることはできません。
では、どのように計算するのでしょうか?

2.増加償却の計算 5つのステップ

ある部品を製造する機械(耐用年数10年、定率法の償却率0.25)
が5台あって、1台あたりの取得価額を10,000千円とします。
5台とも、通常1日8時間の稼働のところ、16時間の稼働をさせました。

【1】機械の1日当たり超過使用時間

(16時間-8時間)×5台/5台=8時間

(個々の機械装置の平均の超過使用時間の合計)/(機械装置の数)
=機械の1日当たり超過使用時間 です。

機械の1日当たりの超過使用時間は、
単純平均法と加重平均法の、どちらか有利な方法を選択できます。
毎期、継続する必要はありません。

【2】増加償却の割合

8時間(機械の1日当たり超過使用時間)×3.5%=0.28

(機械の1日当たり超過使用時間)×3.5%
=増加償却の割合 です。

3.5%は、決められている定数です。

【3】通常の減価償却費

10,000千円×0.25=2,500千円
2,500千円×5台=12,500千円

定率法による5台分の金額です。

【4】増加償却費

2,500千円(通常の減価償却費)×0.28(増加償却の割合)
=700千円
700千円×5台=3,500千円

増加償却費5台分の金額です。

【5】当期の減価償却費の合計

12,500千円+3,500千円=16,000千円

通常の減価償却費+(通常の減価償却費×増加償却の割合)
=減価償却費の合計 です。

例では、通常の減価償却費の28%を割り増しできました。
ただ、増加償却をするには、条件があります。

3.増加償却をするための5つの条件とは?

【1】資産の種類は、機械装置に限定

建物、車両、工具や器具備品は、増加償却できません。
機械装置であっても、平均稼働時間が24時間のものなどは、
増加償却できません。

【2】増加償却の割合が10%以上

1割に満たない場合はダメです。

【3】税務上、定額法又は定率法を採用

生産高比例法はダメです。

【4】「増加償却の届出書」を税務署に提出

当期、増加償却の条件に該当し、届出書を提出しました。
来期、増加償却の条件に該当する場合、来期も届出書を提出します。
事業年度ごとに採用を判断して、届出書を提出しましょう。

【5】超過して稼働したことを証明する書類を保存

作業日報、機械の運転記録など、
機械の稼働時間が通常より超過していることを
証明できる書類の保存が必要です。

3.「増加償却の届出書」はいつまでに提出すればいいの?

当期の法人税の確定申告期限まで

「増加償却の届出書」は、当期の法人税の確定申告期限までに提出します。

4.まとめ

機械装置を通常の稼働時間より超過して稼働させた場合、
条件に該当する限り、「増加償却の届出書」を提出した方がよいでしょう。

減価償却費は現金として残る費用です。
黒字決算であれば、減価償却費を割増し計上することで、
節税と資金繰り改善のメリットを受けられます。

赤字決算の場合でも、原則、「増加償却の届出書」を提出した方がよいでしょう。
金融機関は、決算書の評価を見た目の赤字の金額のみで判断せず、
減価償却費の性質を考慮すると考えます。

ただ、デメリットとして、やや計算が煩雑なことです。
増加償却の金額が少ないようであれば、
事務処理の負担を考慮して、提出しない判断もあるでしょう。