会社の役員には、住宅手当を支給した方がいいの?役員社宅を借り上げた方がいいの?

【住宅手当か、役員社宅か】

住宅手当を給与に含めて支給する。
社宅を借り上げて、社長から一定の家賃を徴収する。
会社によって、いろいろです。

では、会社は、住宅手当の支給を選択した方が良いのでしょうか?
社宅の借り上げを選択した方が良いのでしょうか?
税務面を中心に、考えてみましょう。

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目次
1.会社が住宅手当を支給すると、どうなるの?
2.会社が社宅を借り上げると、どうなるの?
3.会社が住宅手当を支給する場合と、社宅を借り上げる場合とを、比較してみましょう
4.会社が支払う借り上げ社宅の家賃を、給与として課税されないための条件とは?
5.借り上げ社宅のメリットとは?
6.借り上げ社宅のデメリットとは?
7.まとめ

1.会社が住宅手当を支給すると、どうなるの?

住宅手当を支給した場合の、
給与の手取り額を計算します。

社長は、家賃100,000円を毎月支払います。
社長の役員報酬を1,000千円とします。
(給与900千円、住宅手当100千円と考えます。)

扶養親族を2名とします。

【1】役員報酬

900,000円+100,000円
=1,000,000円

【2】社会保険料

東京都の平成28年4月分以降の
「健康保険・厚生年金の保険料額表」
で計算します。

①健康保険料 48,804円
②介護保険料 7,742円
③厚生年金保険料 55,267円
④社会保険料の合計 111,813円

【3】所得税

①社会保険料控除後の給与

1,000,000円-111,813円
=888,187円

②所得税

「平成28年分の源泉徴収税額表」
で計算します。

88,520円

【4】住民税

所得控除は、
扶養控除と基礎控除のみを考慮します。

①住民税の課税標準

1,000,000円(月給)×12-2,300,000円(給与所得控除)
-111,813円×12月(社会保険料の年額)-330,000円×3(扶養2人+基礎控除)
=7,368,000円

②住民税額

7,368,000円×10%(住民税率)
=736,800円(年額)

736,800円×1/12
=61,400円(月額)

【5】手取り給与

当年分の住民税を、
当年の給与から控除すると仮定して計算します。

1,000,000円-111,813円(社会保険料)-88,520円(所得税)-61,400円(住民税)
=738,267円

【6】家賃支払い後の手取り給与

738,267円-100,000円(家賃)
=638,267円

2.会社が社宅を借り上げると、どうなるの?

会社は、家賃100,000円で社宅を借り上げます。
会社は、家賃100,000円のうち、20,000円を
社長の給与から天引きします。

社長の役員報酬900千円、
扶養親族を2人とします。
会社は、住宅手当100,000円の支給をしません。

【1】役員報酬

900,000円

【2】社会保険料

東京都の平成28年4月分以降の
「健康保険・厚生年金の保険料額表」
で計算します。

①健康保険料 43,824円
②介護保険料  6,952円
③厚生年金保険料 55,267円
④社会保険料の合計 106,043円

【3】所得税

①社会保険料控除後の給与

900,000円-106,043円
=793,957円

②所得税

「平成28年分の源泉徴収税額表」
で計算します。

69,450円

【4】住民税

①住民税の課税標準

900,000円(月給)×12-2,240,000円(給与所得控除)
-106,043円×12月(社会保険料の年額)-330,000円×3(扶養2人+基礎控除)
=6,297,000円

②住民税額

6,297,000円×10%(住民税率)
=629,700円(年額)

629,700円×1/12
=52,400円(月額)

【5】手取り給与

当年分の住民税を、
当年の給与から控除すると仮定して計算します。

900,000円-106,043円(社会保険料)-69,450円(源泉所得税)-52,400円(住民税)
=672,107円

【6】社宅家賃の負担後の手取り給与

672,107円-20,000円(社宅家賃の負担分)
=652,107円

3.会社が住宅手当を支給する場合と、会社が社宅を借り上げる場合とを、比較してみましょう

家賃負担後の、最終的な手取り給与を比較してみます。

住宅手当を支給した場合 最終手取り638,267円
社宅を借り上げた場合  最終手取り652,107円
差額 13,840円

13,840円×12か月
=166,080円
社宅を借り上げた方が有利になります。

会社が負担する社会保険料を比較してみます。

住宅手当を支給した場合 会社負担の社保料111,813円
社宅を借り上げた場合  会社負担の社保料106,043円
差額 5,770円

5,770円×12か月
=69,240円
社宅を借り上げた方が有利になります。

会社と社長をトータルでみると、手元資金は増加します。
合計では、235,320円だけ有利になります。

166,080円(給与手取り増加分)+69,240円(会社の社保料の負担減少分)
=235,320円

役員報酬を1,000,000円のままにしておいた上で、
社宅を借り上げたケースでは、
(100,000-20,000円)×12=960,000円
を会社の経費にできます。

本来社長が負担すべき住まいの家賃960,000円を
会社の経費にすることができます。
社宅の借り上げは有利ですね。

4.会社が支払う借り上げ社宅の家賃を、給与として課税されないための条件とは?

会社が負担する借り上げ社宅の家賃を、
地代家賃として経費にするためには、
満たすべき条件があります。

条件を満たさないと、
入居する役員の、役員給与として
課税されてしまいます。

【1】役員社宅で小規模住宅の場合

「通常の家賃」である①~③の合計を、給与から控除する

①「その年度の建物の固定資産税の課税標準額」×0.2%

②12円×(「その建物の総床面積」/3.3㎡)

③「その年度の敷地の固定資産税の課税標準額」×0.22%

床面積が99㎡以下(木造は132㎡以下)の住宅が、
小規模住宅になります。

「通常の家賃」を計算すると、3万円程度の
相当安い金額になることが多いです。

通常の家賃を計算するためには、
家主さんに固定資産税の課税標準額を問い合わせます。
固定資産税の納税通知書のコピーなどをもらうことは難しいのが現実です。

実務上は、家主さんへ実際に支払う家賃の10%~20%程度を
通常の家賃として、徴収することが多いです。
先ほどの計算例では、100,000円×20%=20,000円を徴収しました。
実際の家賃の20%の金額は、「通常の家賃」の金額を上回るケースがほとんどです。

ただ、借地人や借家人は、
固定資産税評価証明書を取得することが可能です。
固定資産税評価証明書には、課税標準額が記載されています。

税務調査でも、社宅の入居者負担分の計算根拠の説明を
求められるケースもあります。
できる限り、固定資産税評価証明書を
取得しておいた方が良いでしょう。

【2】役員社宅で一般住宅の場合

通常の家賃である①~②に合計と、会社が家主に支払う家賃の50%の、多い方を給与から控除する

①その年度の建物の固定資産税の課税標準額×10%(木造は12%)

②その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6%

床面積が99㎡超240㎡以下(木造は132㎡超240㎡以下)で、
豪華社宅に該当しないものが、一般住宅になります。

【3】役員社宅が豪華社宅の場合

家賃の時価を給与から控除する

床面積が240㎡超で、
家賃・内装・外装などを総合的に勘案して
豪華社宅の判断をします。

5.借り上げ社宅のメリットとは?

【1】会社のメリット
①社
長が本来負担すべき住まいの家賃を会社の経費にできる
②社会保険料の負担が減少する

【2】社長のメリット 給与の手取り額が増加する

給与課税されない条件を満たせば、
会社が家主に支払う家賃は、
地代家賃として経費にできます。

会社は、本来社長が負担すべき家賃を経費にできます。
会社と社長の両方の社会保険料負担が減少します。
社長の給与は手取り額が増えます。

6.借り上げ社宅のデメリットとは?

【1】会社のデメリット 借り上げ社宅の管理が必要になる

【2】社長のデメリット 将来受け取る年金額が減少する

社宅の借り上げにより、
更新などの賃貸物件の管理が必要になります。

社長個人が将来受け取る年金額が
減少してしまうことも
頭に入れておきましょう。

7.まとめ

社長の住まいが賃貸なら、
会社が社宅として借り上げることを
一度検討してみましょう。
メリットは大きいと考えます。

福利厚生規程又は社宅規程を整備して、
株主総会の承認を受けておきましょう。
税務調査の対策としても、有効です。

水道光熱費、 家具リース代、駐車場代は、本人負担となります。
会社が負担すると、給与として課税されます。
ご注意ください。