「欠損金の繰越控除」と「欠損金の繰戻し還付」はどちらがいいの?

【欠損金の繰越控除か、欠損金の繰戻し還付か】

当期が赤字のケースは、通常、赤字は、
翌期以降の黒字と相殺するため、
繰り越してゆきます。

当期が赤字でも、前期は黒字で、法人税を納税しました。
こんなケースでは、当期の赤字を、前期の黒字と相殺して、
前期の法人税を戻してもらうこともできます。

では、当期が赤字、前期が黒字のケースでは、
欠損金の繰越控除を選択した方がいいのでしょうか?
欠損金の繰戻し還付を選択した方がいいのでしょうか?
考えてみましょう。

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目次
1.欠損金の繰越控除のメリットとは?
2.欠損金の繰越控除のデメリットとは?
3.欠損金の繰戻し還付を受けると、どうなるの?
4.欠損金の繰戻し還付を受けるための2つの条件とは?
5.欠損金の繰戻し還付のメリットとは?
6.欠損金の繰戻し還付のデメリットとは?
7.まとめ

1.欠損金の繰越控除のメリットとは?

当期の赤字は、翌期以降の黒字と相殺できます。
黒字であっても、赤字をぶつけることで、納税額を減少できます。
法人税の節税メリットがあります。

平成29年4月以降の赤字の賞味期限は、赤字の発生から10年です。
10年間は、節税メリットを享受できる可能性があります。

2.欠損金の繰越控除のデメリットとは?

欠損金には、10年の賞味期限があります。
黒字の確保に苦労し、赤字の全部を相殺できないで、
賞味期限切れとなってしまう可能性もあります。

もっとも10年間も赤字が続いたら、
会社の存続そのものが危ないという、
別の問題がでてきてしまいますが・・・。

3.欠損金の繰戻し還付を受けると、どうなるの?

当期は赤字3,000,000円、前期は黒字5,000,000円、
法人税率を15%として、法人税750,000円を納税しました。
欠損金の繰戻し還付を選択します。

750,000円(前期の法人税)×3,000,000円(当期の赤字)/5,000,000円(前期の黒字)
=450,000円

前期の法人税750,000円のうち、
450,000円を戻してもらうことができます。

当期の赤字を8,000,000円とします。

750,000円(前期の法人税)×8,000,000円(当期の赤字)/5,000,000円(前期の黒字)
=1,200,000円

前期の法人税750,000円より多い、
1,200,000円を戻してもらうことはできません。

前期の黒字5,000,000円までが、
相殺の限度です。残りの3,000,000円は、
翌期以降の黒字と相殺してゆきます。

前々期の黒字を、当期の赤字と相殺することはできません。
遡れるのは、過去1年間だけです。
アメリカのように過去2年間、遡ることはできません。

前期の法人税を戻してもらいました。
還付のために使った欠損金は、翌期以降の繰越しはNGです。
繰戻し還付か、繰越控除か、どちらかを1つだけを適用します。

4.欠損金の繰戻し還付を受けるための2つの条件とは?

【1】前期に青色申告書を提出

【2】当期に青色申告書と繰戻し還付請求書を、申告期限までに提出

毎期、青色申告書を提出期限までに提出していれば、
問題はありません。
当期だけは、税務署へ請求書を発行します。

ただ、すべての会社が、
法人税を戻してもらえるわけではありません。

決算日に資本金が1億円以下の会社であれば、還付を受けられます。
ただ、資本金が1億円以下の会社でも、
資本金が5億円以上の会社の100%子会社は、繰戻し還付は、NGです。

5.欠損金の繰戻し還付のメリットとは?

法人税が現金で戻ってくる

欠損金の繰戻し還付は、法人税が現金で手元に戻ります。
キャッシュインを伴うので、資金繰り面では、たいへん有効です。

6.欠損金の繰戻し還付のデメリットとは?

【1】翌期は当期の赤字の数値以上の黒字が見込まれ、かつ 税制改正で翌期の法人税率が上がる

2つ同時に当てはまるケースで、欠損金の繰戻し還付を選択すると、
翌期の法人税の納税額が、還付される法人税よりも、
大きくなってしまいます。

中小法人で所得が800万円以下の法人税の税率は、
平成29年3月期までは15%、
平成30年3月期からは19%になります。

平成29年3月期が赤字で、
平成30年3月期に黒字が見込まれるケースでは、
繰戻し還付を選択しない方がよいでしょう。

ただ、資金繰りが厳しい、翌期の黒字の確実性が低い、
といった状況では、欠損金の繰戻し還付の選択もあり得ます。

【2】法人住民税と法人事業税は戻ってこない

法人住民税は、直接キャッシュとして、
戻してもらうことはできません。
欠損金の繰越控除をして、将来の黒字と相殺してゆきます。

法人事業税は、キャッシュとして戻してもらうことも、
将来の黒字と相殺することもできません。
ご注意ください。

【3】還付請求すると税務調査がはいるのか?

還付請求すると税務調査が入るとよく言われます。
必ずしも、そうではないと考えます。

仮に、日本全国に会社が300万社あって、
99%が資本金1億円以下の中小法人で、
6割の会社が赤字で、
赤字の会社の2割が翌年に黒字とします。

36万社ですね。

欠損金の繰戻し還付のためだけに、
税務署が36万社の税務調査を
必ずするとは、考えにくいです。

還付される金額などによって、
優先性の高い会社から調査に入っているのだと考えます。
正しく計算しているなら、必要以上の心配はやめておきましょう。

7.まとめ

前期が黒字で、当期が赤字のケースでは、
欠損金の繰戻し還付を選択した方がよいでしょう。
法人税が現金で戻るという、資金繰り面でのメリットが何といっても大きいです。

もちろん、何らかの要因で、
翌期以降に多額の黒字が確実視されるのであれば、
欠損金の繰越控除を選択してもよいと考えます。