家賃の支払いは、月払いがいいの?年払いがいいの?(短期前払費用)

【短期前払費用について、月払いか年払いか】

会社が賃貸している事務所などの家賃を支払います。
通常、家賃は、当月末までに、翌月分を支払います。

会社によっては、向こう1年間分の家賃をまとめて
年払いしているケースもあります。

では、会社が家賃などの費用を先払いする場合、
月払いを選択した方が良いのでしょうか?
年払いを選択した方が良いのでしょうか?
考えてみましょう。

かき氷の旗

目次
1.【短期前払費用】先払いの費用を年払いするメリットとは?
2.【短期前払費用】年払いした先払いの費用を経費にするための条件(デメリット)とは?
3.まとめ

1.【短期前払費用】先払いの費用を年払いするメリットとは?

最大で向こう1年間分の費用を経費にできる

決算日までに、まだサービスの提供を受けていません。
提供を受けていないサービスの料金を、決算日以前に支払います。
その金額は、原則、当期の経費にできません。

条件をそろえると、
最大、向こう1年分の費用(短期前払費用)を経費にできます。
法人税の節税メリットを受けられます。

3月決算の会社です。
当期の利益は3,000千円で、
月額200千円の事務所を賃貸しています。

3月末までに、4月分から翌年3月分までの
家賃2,400千円を前払いします。
実効税率を30%とします。

前払い前の法人税等
3,000千円×30%
=900千円

前払い後の法人税等
(3,000千円-2,400千円)×30%
=180千円

法人税等の節税額
900千円-180千円
=720千円

実質的な現金支出
2,400千円-720千円
=1,680千円

当期の経費には、
すでに昨年4月分から今年3月分までの
家賃が含まれています。

ひとつの事業年度に
2年分の家賃を経費にできますね。
効果は絶大です。

2.【短期前払費用】年払いした先払いの費用を経費にするための条件(デメリット)とは?

短期前払費用として、向こう1年間分の費用の先払いを
経費にするための条件は、7つあります。

【1】契約に基づく、等質等量のサービスに限定される

等質等量のサービスの例です。

①駐車場や事務所などを借りる(地代、家賃)

②生命保険や損害保険に加入して、万一の補償を受ける(生命保険料、損害保険料)

③同業者団体や組合に加入してサービスを受ける(諸会費)

④商標権を利用する権利を受ける (知的財産権使用料) 

税理士や弁護士へ毎月定額を支払う顧問サービスは、
質問する内容や要する時間が、その時々によって異なるのが通常です。
等質等量のサービスに該当しないと考えられます。

従業員の給与も、同様の理由から、
等質等量のサービスに該当しないと考えられます。

契約に基づくことが必要です。
家賃なら、大家さんの同意を得て、前払いしましょう。
自分の意志だけで前払いしても、認められません。

1年分の家賃の前払いに双方合意した旨の契約書を作成しておきましょう。
契約書がない場合、税務調査で経費として認められない可能性もあります。
ご注意ください。

【2】支払日から1年以内にサービスの提供を受ける

3月決算の会社です。
3月31日に支払う家賃は、4月分から翌年3月分までの
向こう1年以内の分でなければなりません。

2年分とか3年分といった、
1年を超える分の先払いは、
認められません。

資金繰りと節税効果の強弱を考慮して、
6か月分とか、3か月分の先払いは可能です。
ぴったり1年分でないといけない、わけではありません。
無理のない範囲で実行しましょう。

【3】決算日までに実際に支払う

決算の際、
(借方)地代家賃 2,400,000円/(貸方)未払費用 2,400,000円
という経理処理をしました。

処理しただけで、実際に支払いをしていません。
これでは、経費として認められません。
実際に、現金や預金からの出金が必要です。

小切手よる支出も認められます。
1か月ごとの先日付で小切手を12枚発行します。
資金繰りには、影響がありません。

ただ、家賃なら、小切手か振込かの支払方法、資金化のタイミングなど、
大家さんの同意を得ないと、関係悪化を招きかねません。
ご注意下さい。

【4】毎期継続して適用する

当期は黒字だから、節税のため、1年分の家賃を前払して経費にします。
翌期は赤字の見込だから、1年分の前払いをやめました。
税務調査の際、前払いした1年分の家賃が否認されてしまいます。

初めて1年分先払いした事業年度以降は、
毎期3月末に1年分の家賃を前払いします。
毎期1年分の家賃が経費になります。

2年分の家賃が経費になるのは、
最初に先払いした事業年度だけです。
節税効果が最初の1回限りということを認識しておきましょう。

どのぐらい継続すればよいのでしょうか?

明確な基準はありません。
税務調査で利益操作の疑いを持たれないよう、
少なくとも5年程度は継続しておいたほうが良いでしょう。

【5】費用収益対応の原則に該当する費用でない

費用収益対応の原則に該当する家賃には、
事務所を賃貸して、それを又貸しするケースがあります。
この場合、短期前払費用として認められません。

受取る家賃収入と支払う家賃は、ひも付き関係です。
同じ事業年度に、収益と費用にする必要があります。

【6】金額が多すぎない

どのくらいの金額までなら大丈夫なのでしょうか?
前払いした金額と他の経費との比較、利益とのバランスなどを考慮します。
ただ、明確な基準はありません。

事業を展開するうえで、
普通に必要となる金額を前払いするのなら、
問題はないと考えます。

【7】会計上、経費として経理処理する

決算の際、実際に支払いをした金額について、
(借方)地代家賃 2,400,000円/(貸方)預金 2,400,000円
といった経理処理が必要です。

3.まとめ

①支払先の同意が得られる
②1年分まとめて支払いしても、資金繰りへの影響は限定的
③毎期、継続して1年分の支払いが可能

3つクリアできるなら、年払いを選択しても良いでしょう。
年払い初年度の節税メリットの、効果は大きいと考えます。

逆に言うと、節税メリットがあるのは、
年払いした最初の年度1回限りです。
また、比較的多額の現金支出を伴います。

資金繰り悪化が予想されるなら、
月払いを選択した方が良いでしょう。