不動産を交換した場合の税金はどうなるの?

【不動産の交換という選択肢】

不動産の譲渡をする場合、一般的には売却が多いのではないでしょうか。
売却以外にも、選択肢のひとつとして不動産の交換を検討してみてはいかかでしょうか。
節税メリットもある不動産の交換について考えてみましょう。

東京の夜景

目次
1.不動産の売却や交換をした場合、税金はどうなるの?
2.不動産の交換の特例を適用するための6つの条件とは?
3.不動産を交換したときにかかる費用とは?
4.不動産の交換の特例の適用を検討した方がいいケースとは?
5.不動産の交換した後、譲渡するときに注意することとは?
6.不動産の交換の特例をあえて適用しないケースとは?
7.まとめ

1.不動産の売却や交換をした場合、税金はどうなるの?

【1】不動産を交換した場合の税金はどうなるの?

個人が不動産を売却するとき、利益に対する税金が
どうなるのか考えてみましょう。

①所有期間5年以内の土地や建物 所得税30%、住民税9%

個人が土地や建物を譲渡しました。
譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年以内の土地や建物の譲渡には、
譲渡益に対して所得税30%と住民税9%がかかります。
(平成49年までは、復興所得税込みで、30.63%です。)

②所有期間5年を超える土地や建物 所得税15%、住民税5%

所有期間が5年を超えるときは、
譲渡益に対して所得税15%と住民税5%がかかります。
(平成49年までは、復興所得税込みで、20.315%です。)

③土地と建物を売却した場合の税金はどうなるの?

Aさんの土地5千万円と現金1千万円、Bさんの土地6千万円を交換した場合の納税額を考えます。
その前にまず、AさんとBさんが土地を売却した場合の税金を考えてみます。
土地の所有期間はそれぞれ7年とします。

・Aさんが土地を売却したときの納税額 400万円

Aさん所有の土地の時価5,000万円、
土地の取得価額3,000万円とします。

5,000万円-3,000万円=2,000万円
×(所得税15%+住民税5%)=400万円

・Bさんが土地を売却したときの納税額 400万円

Bさん所有の土地の時価6,000万円、
土地の取得価額4,000万円とします。

6,000万円-4,000万円=2,000万円
×(所得税15%+住民税5%)=400万円

Aさん、Bさんともに400万円の納税額になります。

④土地と建物を交換した場合の税金はどうなるの?

今度は、土地と建物について不動産の交換の特例を適用すると、
税金はどうなるのでしょうか。
税務上、不動産を交換した部分は譲渡がなかったものと考えます

・Aさんが土地を交換したときの納税額 ゼロ

時価5,000万円の土地を交換で譲渡。
現金1,000万円を支払い。
時価6,000万円の土地を取得。
土地の取得価額は、3,000万円とします。

時価5,000万円の土地は、不動産の交換の特例で譲渡はなかったと考えますので、税負担はゼロです。
取得した時価6,000万円の土地のうち、1,000万円部分は、現金で購入したと考えます。

・Bさんが土地を交換したときの納税額 66万

時価6,000万円の土地のうち、
5,000万円部分を交換で譲渡。
1,000万円部分を現金1,000万円で売却。
土地の取得価額は4,000万円とします。

土地のうち5,000万円部分は、不動産の交換の特例で譲渡はなかったと考えますので、税負担はゼロです。
土地のうち1,000万円部分は、現金1,000万円で売却したことになり、税負担が発生します。

1,000万円-(取得価額4,000万円 × 現金1,000万円/土地の時価6,000万円)
=333万円×(所得税15%+住民税5%)
=66万円

AさんとBさんともに売却のときの税負担400万円が、
Aさんはゼロ、Bさんは66万円になります。
ただ、不動産の交換の特例は、無条件に適用できるわけではありません。

2.不動産の交換の特例を適用するための6つの条件とは?

【1】 交換する資産は、固定資産限定

不動産業者の販売用の土地や建物は、棚卸資産です。
どんなに気に入った土地や建物でも、棚卸資産との交換では適用NGです。
もちろん双方合意すれば、交換することは自体は可能です。

【2】同種類の固定資産限定

土地は土地どうし、建物は建物どうしの交換でないとNGです。
土地と建物を合わせて等価交換しても、土地どうし、建物どうしで判定します。
状況によっては、納税の必要が発生してしまいます。
もちろん、交換自体を否定する意味ではありません。

【3】交換する資産の所有期間は、1年以上限定

交換しようとする固定資産の所有期間が、1年以上でないと適用できません。
短期間で交換すると、税務当局は租税回避と考えます。

【4】交換する資産の取得目的は、交換以外の目的限定

交換する目的で資産を取得した場合、交換の特例の適用はできません。

【5】交換で取得する資産の用途は、譲渡した資産と同じ用途に限定

譲渡した建物が居住用であれば、 取得した建物も居住用でなければ
交換の特例の適用はできません。

【6】交換で譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、高い方の時価の20%以内

さきほどの交換の例での時価の差額は、
Bさんの土地6,000万円-Aさんの土地5,000万円
=1,000万円 です。

高い方の時価の20%は
Bさんの土地6,000万円×20%
=1,200万円です。

1,000万円(時価の差額) ≦ 1,200万円(高い方の時価の20%)
条件を満たすのでOKです。

3.不動産を交換したときにかかる費用とは?

不動産取得税、登録免許税、印紙税などがかかる

交換の場合でも、取得した資産には不動産取得税が課税されます。
所有権が移転するため、登録免許税も課税されます。

交換契約書の作成により印紙税もかかります。
司法書士への報酬や不動産会社への仲介手数料が発生する場合もあるでしょう。
交換でも資金繰りには注意しましょう。

4.不動産の交換の特例の適用を検討した方がいいケースとは?

こんなケースは不動産の交換の適用を検討してみましょう。

【1】借地権者と底地権者がいる土地を単独の所有権にするケース

借地権者と底地権者で、一部の借地権と一部の底地を交換し、
両者とも単独所有権を得るケースでは、不動産の交換を検討してみましょう。

【2】共有の土地を単独所有の土地にするケース

共有者AさんとBさんがいる共有の土地について、
Bさんの土地の共有持分と、Aさんが単独所有する別の土地とを交換し、
土地の共有状態をAさんの単独保有状態にするケースでは、不動産の交換を検討してみましょう。

5.不動産の交換した後、譲渡するときに注意することとは?

交換の特例は、譲渡時の税金を繰り延べるものです。
今回の例で、Aさんが2年経過後に交換で取得した土地5,000万円と購入した土地1,000千円を
7,000万円で譲渡します。

【1】交換で取得した土地部分

交換前の土地の取得価額と取得時期を引継ぐ

不動産の交換の特例により、交換前の土地の取得価額と取得時期を引き継ぎます。
このため分離長期による課税です。
(5,000万円-3,000万円)×(所得税15%+住民税5%)=400万円

【2】交換時に購入した土地部分

交換前の土地の取得価額と取得時期を引継がない

不動産の交換時の購入部分は、取得価額と取得時期を引き継ぎません。
分離短期による課税です。
(10,000千円-10,000千円)×(30%+9%)=0円

交換時に購入部分がある場合、
交換後5年以内の短期に譲渡するときは、
購入部分について思わぬ高額な税金が課税されるケースがあります。

6.不動産の交換の特例をあえて適用しないケースとは?

交換した年に、他の譲渡した土地の譲渡損がある

交換した年に、他の譲渡した土地の譲渡損があれば、
あえて交換の特例を適用せず、交換による譲渡益に譲渡損をぶつけて、
課税を繰り延べしない選択も考えられます。

7.まとめ

不動産の交換の特例は、交換時の土地建物の譲渡益課税を、
交換で取得した土地建物を譲渡するまで繰り延べるためのものです。

交換時に土地や建物の購入部分がある場合、交換から5年以内に売却すると、高額の税負担が発生する場合があります。
他の土地建物の譲渡損に譲渡益をぶつけて、あえて交換の特例を適用しない方がよいケースもあります。
ご注意ください。