輸出免税での消費税の課税期間特例、課税期間短縮を選択していますか?

【輸出免税での消費税の課税期間特例、課税期間短縮の選択】

消費税は、通常、1年ごとに申告書の提出と納税をします。
「3か月ごと」や「1か月ごと」ですと、事務はたいへんですが、
メリットもあります。

輸出をする会社では、消費税の課税期間特例を選択し
短縮した方が良いのでしょうか?短縮しない方が良いのでしょうか?
考えてみましょう。

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目次
1.輸出をする会社の消費税の納税(輸出免税)
2.輸出免税で消費税の課税期間特例を選択して、課税期間を「3か月」や「1か月」に短縮するとどうなるの?
3.輸出免税で消費税の課税期間特例を選択して、課税期間を短縮するメリットとは?
4.輸出免税で消費税の課税期間特例を選択して、課税期間を短縮するデメリットとは?
5.輸出免税を受けるための6つの条件とは?
6.名義貸しでの輸出とは?
7.まとめ

1.輸出をする会社の消費税の納税(輸出免税)

「納税する消費税」=「売上の消費税」-「仕入の消費税」

国内で行う商品や製品の販売では、納税する消費税は上記の計算をします。
もし、「売上の消費税」がゼロなら、「仕入の消費税」が還付されます。

商品や製品の輸出では、その商品や製品は外国で消費されます。
消費税法は、外国で消費される資産には、消費税を免除する考え方をとっています。
輸出では消費税率が「ゼロ%」になります。

輸出のみを専門に行う会社では、「売上の消費税」はゼロになります。
大まかに言うと還付申告すれば、「仕入の消費税」の全額を還付してもらえます。
輸出で消費税率を「ゼロ%」にするには、後に記載する6つの条件を満たす必要があります。

2.輸出免税で消費税の課税期間特例を選択して、課税期間を「3か月」や「1か月」に短縮するとどうなるの?

【1】3か月ごと又は1か月ごとに、消費税が還付される

【2】3か月ごと又は1か月ごとに、消費税の申告が必要

例えば、年480万円ほどの消費税の還付を受けている、輸出業の会社があるとします。
通常、消費税の申告は、事業年度ごとに年1回です。
年1回だけ480万円の還付となります。

課税期間の特例選択届を提出します。
申告書の提出のタイミングを 「3か月ごと」か
「1か月ごと」のどちらか一つを選択できます。

「3か月ごと」なら年4回で、1回あたり約120万円、
「1か月ごと」なら年12回で、1回あたり約40万円、
消費税の還付を受けられます。

3.輸出免税で消費税の課税期間特例を選択して、課税期間を短縮するメリットとは?

3か月ごと又は1か月ごとに、消費税が還付される

事業年度の終了を待つことなく、
早いタイミングで仕入にかかる消費税を還付してもらえます。
資金繰りの改善に効果的です。

「3か月ごと」、又は「1か月ごと」に、ほぼ正規の決算を組みます。
早いタイミングで正確な損益が把握でき、
内部管理体制の充実が期待できます。

なお、直接的な節税メリットはありません。

4.輸出免税で消費税の課税期間特例を選択して、課税期間を短縮するデメリットとは?

消費税の申告回数が増え、事務処理の負担が増える

「3か月ごと」、又は「1か月ごと」に、
ほぼ正規の決算を組み、消費税の申告をします。
事務処理の負担増となります。

5.輸出免税を受けるための6つの条件とは?

【1】消費税の課税事業者である

免税事業者の方は、課税事業者を選択する必要があります。
消費税の還付を受けられるからと、単純に課税事業者を選択するのは、危険です。
今後の業績予測に基づいて、選択するかどうか判断しましょう。

【2】簡易課税を選択していない

簡易課税を選択している方は、簡易課税の選択をやめる届出書を提出する必要があります。
消費税の還付のためだけに、単純に簡易課税をやめる判断をするのは、非常に危険です。
今後の国内売上と輸出売上の推移や総売上に占める割合などの業績予測に基づいて、
簡易課税をやめるかどうか判断しましょう。

【3】会社が事業として対価を得ている資産の譲渡等である

通常の商品や製品の販売であれば、該当します。

【4】国内取引である

原則として、資産を譲渡する時点で、
その資産の所在場所が国内であれば、
国内取引になります。

【5】輸出取引である

国内から輸出として行われる、
通常の商品や製品の販売であれば、
該当します。

【6】輸出の証明書を保管している

輸出許可証などの証明書類の保管が必要です。
郵便での輸出で販売金額が20万円未満であれば、
輸出の事実を記載した帳簿や書類の保存で足ります。

6.輸出免税における名義貸し

【1】商社を経由して輸出をする輸出免税

通常、輸出申告書に記載された会社が、輸出者となり、
輸出免税の適用を受けます。
商社を経由して輸出をするケースもあります。

具体的には、輸出申告書に記載された商社が形式的な輸出者で、
別に実質的な輸出者がいる、いわゆる名義貸しのケースです。
このケースでは実質的な輸出者は、輸出申告書に記載されません。
すると、輸出免税の適用を受けられないことになってしまいます。

【2】実質的な輸出者が輸出免税を受けるための3つの条件とは?

①輸出許可証の原本を保管

②商社に輸出免税の不適用の連絡一覧表を交付

③商社に、「この商品は売上や仕入として会計処理しないでください」と説明

輸出免税の不適用の連絡一覧表には、
「この商品はうちで輸出免税を受けるから、そちらでは輸出免税を受けないでくださいね。」
という内容が書いてあります。

商社と実質的な輸出者が、ダブルで輸出免税を受けないようにしてくださいと言うわけです。

なお、商社サイドは、法人税の申告書を提出する際、
実質的な輸出者から交付された輸出免税の不適用の連絡一覧表の写しも併せて提出します。

実質的な輸出者が商社に支払う名義貸し料金は、
国内取引の料金です。実際の輸出者は課税仕入、
商社は課税売上になります。

7.まとめ

課税期間を「3か月」に短縮して、消費税の申告書を「3か月ごと」に提出するのがよいでしょう。
還付される見込みの金額が多額になるようなら、事務処理の負担増とのバランスを考えて、
課税期間を「1か月」に短縮することを検討してもよいでしょう。

なお、「仕入にかかる消費税」には、商品を輸入する際、
税関へ支払う輸入消費税も含まれます。
経理上、輸入消費税を関税などとは別に、きちんと区分しておくことが大切です。